OLX:マルチモーダルAIショッピングアシスタント「OLX Magic」で検索体験を刷新

中古マーケットプレイスOLXが「OLX Magic」を開発。テキスト・画像・音声対応の会話型ショッピングアシスタントで、ハイブリッド検索とエージェントアーキテクチャを実装。

+10 %検索からのコンバージョン率向上
数値の信頼性
公式出典あり
言語AI RAG AIエージェント 画像AI

この事例のポイント

導入効果
+10%検索からのコンバージョン率向上
業種
小売(EC)業

Before

OLXはグローバルなオンラインクラシファイド・中古マーケットプレイスのリーダーである。おもちゃから不動産まで幅広いカテゴリーを扱い、ユーザーが中古品を売買するためのプラットフォームを提供している。しかし、中古マーケットプレイス特有の課題が検索体験の質を低下させていた。

不完全な商品情報の泛滥

中古マーケットプレイスでは、出品者が必ずしも完全な商品情報を入力しないため、従来のフィルター検索では多くのユースケースに対応できなかった。例えば「心拍数測定機能付きスマートウォッチ」を探したい場合、構造化データとして「心拍数測定」が登録されていない商品は検索結果に現れない。商品説明文にその情報が含まれていても、キーワードマッチングでは見落とされがちだった。

ユーザーの多様な検索スタイル

ECサイトのユーザーは、「Dyson v15」のような具体的な商品名を入力する場合もあれば、「母の誕生日プレゼントに何がいい?」のような曖昧な意図で検索する場合もある。従来の検索インターフェースでは、後者のような探索的な検索ニーズに十分に応えられず、ユーザーは何度も検索条件を変更しながら希望の商品を探す必要があった。

画像検索の限界

ユーザーが実際に気に入った商品の画像を持っている場合、その画像に似た商品を探したいニーズがあった。しかし従来の画像検索は単純なビジュアルの類似性に依存しており、「このデザインだけど色は赤がいい」といった細かな要望の調整には対応できなかった。

レイテンシとコストのジレンマ

LLMベースのエージェントシステムは、従来の検索の300〜500ミリ秒に対して、裏側で多数のAPIコールを行うため5〜10秒の応答時間がかかる。ユーザーはタイピングしながら結果を期待しており、この応答速度の差は受け入れがたいものだった。

AI導入内容

OLXはこれらの課題を解決するため、 「OLX Magic」 と名付けた会話型AIショッピングアシスタントを開発した。テキスト、画像、音声に対応したマルチモーダルな検索体験を提供し、エージェントアーキテクチャでユーザーの意図を深く理解する。

エージェントアーキテクチャ

OLX Magicの中核には、ユーザー意図を理解し自律的にタスクを実行するAIエージェントが存在する。

モデルルーター 商用LLMと社内微調整モデルを組み合わせたハイブリッドアプローチを採用。ユースケースに応じて最適なモデルを選択し、性能とコスト・レイテンシのバランスを取っている。

ツールアクセス エージェントはWeb検索(カタログ外の商品調査用)、テキスト検索、画像検索、URL解析など複数のツールにアクセスできる。ユーザー入力に基づいてプランを生成し、必要なツールを呼び出す。例えば「ワルシャワで500ズロティ以下の靴を探して」というリクエストでは、並列で複数の検索ツールを起動して包括的な結果を提示する。

リクエストのスペクトル対応 「Dyson v15」のような具体的なリクエストから「母の誕生日プレゼント」のような抽象的なリクエストまで、スペクトル全体に対応する。抽象的なリクエストの場合は、エージェントが明確化のための質問を繰り返し、十分な情報が集まった段階で検索を実行する。

ハイブリッド検索システム

「ショッピングアシスタントの良さは検索の良さに依存する」という洞察のもと、キーワードマッチングと意味的検索を組み合わせたハイブリッド検索を実装した。具体例として、「アクアマリンブラウス」を検索する場合、従来のキーワードマッチングではその exact キーワードを持つ1商品のみが返るが、意味的検索では似たような青色のブラウスが多数返る。ハイブリッド検索は両者を組み合わせて最適な結果を提示する。

画像検索とモディファイア機能

画像検索に加えて、 「モディファイア」 機能を実装。ユーザーは気に入った商品の画像をアップロードし、「これだけど赤色がいい」とテキスト指示を加えることができる。色、形状、袖の長さなど、さまざまな属性に対する変換を画像検索結果に適用する。これにより、「この形が気に入ったけど別の色が欲しい」というニーズに応えられる。

レイテンシ管理とUX最適化

エージェントシステムのレイテンシ課題に対し、以下の対策を講じた。

ストリーミング応答 応答を一度に返すのではなく、生成された部分から順次表示することで、体感レイテンシを軽減した。

インスタント結果 高度なエージェント応答を待つ間、従来の検索結果を即座に表示する。ユーザーを待機状態にせず、すぐに関連商品を閲覧できるようにした。

UIの進化 最初のバージョンではチャット形式のオンボーディングカードを採用したが、利用率が低かった。ユーザーインタビューから「ChatGPTのような対話は常に必要ではない」と学び、第2版では馴染みのある検索バーに近いUIに進化させた。自然言語での絞り込み(「ワルシャワ、500ズロティ以下」)は、従来のフィルターチップのように個別に削除可能なUIで表示する。

ガードレールと評価

当初は緩やかなガードレールを採用していたが、OLX以外の買い物を頼まれるケースが発生したため、プロンプトエンジニアリングを強化した。画像のみアップロードされた場合に誤ってブロックする「偽陽性」の問題も継続的に改善している。評価にはLLM-as-a-judgeとヒトによる評価を組み合わせ、対話のオフライン再訪と本番デプロイ前の重厚なテストを実施している。

After

OLX Magicの導入により、中古マーケットプレイスにおける検索体験が革新的に変化した。

コンバージョン率の向上

会話型インターフェースとマルチモーダル検索の組み合わせにより、検索からのコンバージョン率が約10%向上した。特に商品比較機能は、比較的シンプルなLLM実装でありながら強力なユーザーエンゲージメントと好評価を獲得している。

ユーザーの検索行動の変化

本番利用データの分析から、約3分の1のユーザーが文脈を含む自然言語で検索し始めていることが判明した。残りの3分の2は従来のキーワードスタイルを維持しているが、これは継続的な行動変容の旅路の途中であることを示している。

探索的ショッピングの実現

「母の誕生日プレゼント」のような抽象的なニーズから、「ワルシャワで500ズロティ以下の靴」のような具体的な絞り込みまで、スムーズな探索体験を提供できるようになった。スマートグループ機能では、スマートウォッチ検索時に充電器などの補完商品を提案する「探索と活用のバランス」を実現している。

運用効率と継続的改善

LLMコールのコスト管理は継続的な課題だが、モデルルーターによる最適なモデル選択とキャッシュ戦略で対処している。すべてのエージェントツールは全トラフィックボリュームに対応可能なスケーラビリティを確保する必要があり、これは「解決が難しいエンジニアリング課題」と認識されている。

OLXの事例は、LLMエージェントを本番EC環境にデプロイする際の重要な原則を示している。LLMと従来のMLシステムを組み合わせる価値、実際のユーザー行動に基づく反復的改善の重要性、レイテンシ・コスト・ガードレールの継続的課題、そしてAI機能を馴染みのあるUIパターンで提供する必要性を実証した先進事例である。

公式出典あり この事例の効果数値は、企業のプレスリリースまたは公式発表に基づいています。 出典を確認

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公開日: 2024年10月1日

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