Before
Co-opは英国で5番目に大きい食品小売企業であり、全国に2500店舗以上を展開する消費協同組合である。食品販売に加え、葬儀サービスや保険、法律サービスも手掛け、数百万の組合員に支えられた老舗ブランドとして知られる。2023年、同社は店舗従業員(ストア・コリーグ)が日々の業務を円滑に進めるための情報アクセスを劇的に改善する機会を特定した。
店舗従業員が利用できる業務マニュアルは1000以上のWebベースガイドに及び、すべての店舗方針と手順を網羅している。しかし、従来のキーワード検索エンジンでこれらの文書を探す作業は時間を要し、正確な検索語を入力しなければ目的の情報に辿り着けなかった。さらに、たとえ正しい文書が見つかっても、内容は長大で詳細なものだったため、必要な箇所を探し出すまでにさらなる時間がかかった。
この情報発見プロセスの非効率性は、週あたり5万から6万件にも及ぶ問い合わせという膨大なボリュームと相まって、深刻な業務負荷を生み出していた。多くの従業員は結局、サポートセンターに電話やメールで問い合わせることに頼っており、これが運用コストの増大と業務効率の低下を招いていた。Joe Wretham上級データサイエンティストは、「正しい文書を見つけ、必要な情報を特定するプロセスが、忙しい店舗で働くコリーグにとって大きな負担になっていた」と振り返る。
AI導入内容
Co-opのデータサイエンスチームは、長年利用してきたDatabricks Data Intelligence Platformを基盤に、初の生成AIプロジェクト 「How Do I?」 を立ち上げた。RAG(検索拡張生成)ベースの仮想アシスタント・アプリケーションを構築し、店舗内で即座に正確な情報を検索・回答する仕組みである。
ナレッジベースの自動更新パイプライン
1000以上の業務文書はコンテンツ管理システム「Contentful」で管理されている。Databricks Lakeflow Jobsを用いて、これらの文書を毎日自動的に抽出し、埋め込みベクトルを生成するパイプラインを構築した。生成された埋め込みはDatabricks Vector Searchに格納され、セマンティック検索(意味的類似性に基づく検索)を可能にしている。これにより、従業員がキーワードだけでなく自然言語の問いかけで情報にアクセスできるようになった。
モデル選定と評価フレームワーク
機械学習ライフサイクル管理にはMLflowを採用し、モデルの入れ替えや実験を効率化した。開発過程ではDBRX、Mistral、OpenAIのGPTモデルなど複数のAIモデルを実験的に評価した。Databricksプラットフォーム上に専用の評価モジュールを構築し、数百のテスト質問を様々な設定でアプリケーションに投げかけ、正確性、応答時間、セーフガード機能を評価した結果、OpenAIのChatGPT-3.5が性能、速度、コスト、セキュリティのバランスで最も優れていると判断された。
Databricks Model Servingを活用したことで、モデルのデプロイが簡素化され、既存インフラへのシームレスな統合が実現した。さらに、構文クエリや簡易的な問題解決にはDatabricks Assistantも併用し、開発効率を高めた。
プロンプト最適化とセキュリティ
DatabricksはOpenAIやHugging Faceなど外部ツールとのシームレスな統合を提供したことで、チームは技術的な複雑性ではなくイノベーションに集中できた。プロンプトの微調整により応答の正確性と関連性を最適化し、パラメータ調整で回答を制御する仕組みも確立した。将来的にはUnity Catalogへの移行により、データガバナンスとアクセス制御を強化し、より安全なデータ管理を目指している。
After
新しい生成AIソリューションの導入により、Co-opの店舗従業員はより迅速かつ正確に業務に必要な情報にアクセスできるようになった。社内テストからの初期フィードバックは圧倒的に好評で、従業員はAI搭載アプリケーションが直感的であり、従来のシステムよりはるかに速く必要な情報を取得できると評価している。
サポートセンター負荷の軽減
アプリケーションは週あたり約2万3000件の初回クエリと3万5000件のフォローアップ質問を受けている。新システムへの移行により、この膨大な問い合わせボリュームをより効率的に処理できるようになり、店舗スタッフの生産性、効率性、時間管理が向上した。従業員のセルフサービス利用が促進され、サポートセンターへの依存が減少している。
将来の展望
Co-opはさらなる生成AIプロジェクトも検討している。法的文書処理の自動化や顧客オファーのパーソナライズ化など、小売業務におけるAIの変革的な可能性を探っている。2024年内に選定した店舗で「How Do I?」プロジェクトの本格トライアルを開始する予定であり、成功が証明されれば全店舗への展開を視野に入れている。Wrethamは、「Databricksは私たちのすべてのデータとAI業務の基盤となり、あらゆる段階でワークフローを容易にする障壁を取り除いてくれた」と結論付けている。
公開日: 2024年1月15日
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