Before
Carrefour(カルフール)は世界有数の小売企業で、30カ国以上に1万2000以上のハイパーマーケット、スーパーマーケット、食料品店、コンビニエンスストアを展開する。フランス国内では年間1億400万世帯が利用し、全フランス人がCarrefourの店舗から平均8分以内の場所に住んでいるという圧倒的なプレゼンスを誇る。
このレベルのサービスを提供するには、顧客を重視する揺るぎない姿勢と、強力かつ効率的な店舗運営・メンテナンス体制が不可欠だ。しかし、Carrefourの店舗と倉庫におけるサービス要求の管理には大きな課題があった。
古いシステムでは、店舗の冷蔵庫やその他の設備が故障した場合、その特定、報告、修理に時間がかかり過ぎていた。エージェントが修理を依頼してからエンジニアが問題を診断し、交換部品が届くまでの間、顧客が店舗を訪れても冷蔵ショーケースは空の状態になってしまう。食品の品質低下や廃棄につながり、収益性の低下を招いていた。
モランジ・スーパーマーケットの店舗ディレクターCorina Vlonga氏は、「かなり旧式で時間のかかるシステムだった。要求を送信してから修理完了までに時間がかかり過ぎていた」と振り返る。コンピューターでツールを使う自信がないスタッフもおり、システムの利用が現場に定着していなかった。
設備メンテナンスの非効率は、顧客体験の中断を招くだけでなく、従業員の業務負担も増大させていた。問題発生時の報告手順が複雑で、誰に連絡すべきか、どのような情報を伝えるべきかが不明確だった。結果として、対応が遅れ、問題の拡大を招くケースも少なくなかった。
AI導入内容
CarrefourはServiceNowと連携し、「Click & Repair」と呼ばれるコンピューター化されたメンテナンス管理システム(CMMS)ソリューションを開発した。このソリューションはCarrefourによる草分け的なイニシアチブであり、ServiceNowにとっても小売業界での初の試みとなった。
第1層:QRコードによる設備識別と即座の報告
Carrefourの店舗と倉庫にある技術資産やセキュリティ資産には、すべてQRコードが明示された。店舗スタッフが冷蔵庫のファンの故障やドアシールの破損などの設備問題に気づいた場合、携帯電話でアプリを開き、該当するQRコードを読み込むだけで報告が完了する。
QRコードを読み込むと、ServiceNowが故障した部品のシリアル番号などの主要な情報を自動的に認識。スタッフは問題の詳細を追加することもできるが、基本的な情報はシステムが自動取得するため、手入力の負担は最小限に抑えられた。
第2層:Task Intelligenceによる故障分類と技術者マッチング
ServiceNowのTask Intelligenceと Field Service Management(FSM) を組み合わせることで、報告された問題をAIが即座に解析し、最適な対応を自動決定する仕組みを構築した。
AIによる故障状況の自動推定 QRコードから得られた設備IDと、スタッフが入力した短いコメントや写真をAIが解析。過去の膨大な修理データに基づき、故障の「カテゴリ」や「重要度」を即座に分類する。例えば、入力された「冷えない」という情報に対し、それが「コンプレッサーの故障」か「設定の不備」かを確率的に推定し、必要な工具やスペアパーツを事前に特定する。
Predictive Intelligenceによる高度なアサイン Predictive Intelligenceを活用したマッチングアルゴリズムが、以下の要素をリアルタイムで解析し、最適な技術者を自動的に選定・派遣する。
- 故障の難易度に対する技術者のスキルセット
- 現在位置からの移動時間
- 過去の同種設備に対する修理実績
- 現在のタスク負荷状況
これにより、単なる「近くにいる人を呼ぶ」以上の精度で派遣が可能になり、初回訪問での修理完了率(First Time Fix Rate)が大幅に向上した。冷凍ユニットは2時間以内、冷蔵ショーケースは4時間以内という極めて厳しいSLA(サービス品質合意)の達成を、AIの予測精度が支えている。
第3層:リアルタイム可視化とプロセス管理
Click & Repairにより、Carrefourの店舗マネージャーのために設備メンテナンスプロセスをエンドツーエンドで可視化することができた。修理依頼から完了までのステータスがリアルタイムで確認でき、いつ技術者が到着するか、修理の進捗はどうかが一目でわかる。
アティス=モンス店メンテナンス責任者のAzzedine El Boudali氏は、「ServiceNowを活用したClick & Repairツールによって、問題が生じれば、店舗スタッフが直ちに私たちのチームに通知できるようになった。通知を受けたら、要求を管理して、サービスプロバイダーにエスカレートする」と説明する。
この可視化により、サービスプロバイダーの監視がはるかに詳細かつ正確になった。契約違反や遅延がリアルタイムで検知でき、適切なフォローアップが可能になった。
第4層:店舗清掃管理への展開
Click & Repairの成功を受け、Carrefourは店舗の清掃においても同様のシステムの立ち上げに取り組んでいる。同じモデルをベースとした新しい清掃ワークフローにより、店舗で請負業者が行う業務の管理と、店舗間でのエクスペリエンスの統一が可能になる。
さらに、Click & Repairの導入をIT機器、他国で展開されているグループ会社、フランチャイズパートナーにまで広げることも検討されている。
After
Click & Repairの導入により、Carrefourは以下の定量的・定性的な成果を達成した。
修理時間の大幅な短縮
店舗での修理時間が大幅に短縮された。冷凍ユニットは2時間以内、冷蔵ショーケースは4時間以内という厳格なSLAを達成し、設備トラブルによる営業中断時間を最小限に抑えた。これにより食品廃棄のリスクが減少し、収益性の向上につながった。
より迅速かつ集中的な修理
技術者には事前に適切な情報と部品が提示されるため、初回訪問での問題解決率が向上した。複数回の訪問が必要だったケースが減少し、技術者の生産性も向上した。
顧客サービスの中断最小化
設備トラブルによる顧客体験の中断が大幅に減少した。冷蔵ショーケースが空になる時間が短縮され、顧客は常に新鮮な商品を購入できる環境が整った。
従業員満足度とNPSスコアの向上
店舗スタッフはClick & Repairを「簡単で迅速」だと評価している。モバイルアプリのおかげで、店舗内だけでなくガソリンスタンドや駐車場でも、チームが問題に気づいたその場で柔軟にアクションに移すことができる。従業員が「非常に満足」しており、NPSスコアも向上した。
Vlonga氏は、「モランジ店のすべての管理者が店内でClick & Repairを使用していて、アジリティの効果が出ている。以前は、コンピューターでツールを使う自信がない人もいたが」と語る。
管理業務の削減と重要タスクへの集中
Click & Repairによって管理業務が削減され、サポート、技術、セキュリティのプロセスが改善されたことで、Carrefourのスタッフはより重要なタスクや売り場での顧客のサポートに専念できるようになった。
フランスCarrefour社テクニカルディレクターのGuillaume Verkant氏は、「CMMSをアップグレードするこのプロジェクトは、すべてのマーケットストア、ハイパーマーケット、倉庫において『簡素化を追求する』という1つの目標に向けた広範な取り組みの一環だった。この新しいアプリケーションを導入することで、サービスプロバイダーの監視がはるかに詳細かつ正確になり、店舗での修理時間が大幅に短縮された」と締めくくる。
ServiceNowとの連携はCarrefourにとって初の試みだったが、アプリケーションのデジタル化や簡素化において、さまざまな機会が広がった。顧客体験と従業員エクスペリエンスの両方を向上させる最善の方法はデジタルであるという考えを、実践によって証明した。
公開日: 2024年1月1日
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