ブルックリン:AI需要予測でパン廃棄大幅削減、製造リーダーの勘からデータ駆動へ

ベーカリーブルックリンがAI需要予測サービス「サキミル」を導入。製造リーダーの勘に頼っていた売上予測からAI予測へ転換し、月間最大2,700個の廃棄削減と販売機会ロスの低減を実現。長時間労働の削減にも寄与。

+2700 個/月廃棄削減
数値の信頼性
公式出典あり
予測AI

この事例のポイント

導入効果
+2700個/月廃棄削減
業種
小売(EC)業
導入分野
営業

Before

ブルックリンはパンの製造販売を行うベーカリーである。同社が抱えていた課題は、ベーカリー業界全体に共通するものだった。

「その日に焼いたものや作ったものは、その日のうちに売り切らなければいけないんです。そして、残ったものを全部廃棄しなければなりません。そのため、あらかじめ売り上げを予測して作ることになるのですが、人の頭だけで予測したものだとどうしても外れてしまうことが多いという課題を抱えていました」(長谷川氏)

何が何個売れるか、どのくらいお客さまが来るかがあらかじめ分かっていれば、それに合わせて製造でき、業務の効率化が図れ、長時間労働も削減できる。また、製造の面だけでなく販売スタッフの面でも、売上予測に応じて人員配置を調整できる。あらかじめ売上が予測できれば、アルバイトを1人減らすことで、一日当たり5,000円から8,000円の人件費削減が可能だ。

これまでは、製造リーダーの経験と勘のみに頼った売上予測をしていた。そのため、予測に1%の誤差があるとパンを1日30個廃棄することになり、10%ほどずれてしまった場合には、300個も廃棄していた。パン業界に40年ほどいる父でも大外れすることがあり、経験と勘だけではお客さまの予測は難しいという。

「朝7時オープンの直前に朝礼を行い、今日は何万円くらいの売り上げとなるだろうから、その分作ってくださいねと製造のメンバーにお伝えするのですが、それが大外れすることもあって。材料費もそうですし、それを作った分の人件費もかなりロスになってしまうので、そういう点では勘に頼るのは非常に難しいです」(長谷川氏)

また、自分が思っていた以上にお客さんがいらっしゃって、18時閉店なのに17時くらいにパンがなくなってしまい閉店せざるを得ないこともあった。製造リーダーとして常に現場に立つ丸田氏もこう語る。

「外の気温や天気でお客さまの入りが変わったり、お店周辺の美術館や建物でイベントが催されていると人の出入りも多くなったりするので、そういったもので判断していました。本当に勘なので大変でした」(丸田氏)

AI導入内容

導入までの経緯

ブルックリンは2年ほど前に日経新聞に掲載されていた記事を見て、AI需要予測サービス「サキミル」を初めて知った。精度の高い売上予測をするためにAIを活用したサービスがないか探していたタイミングだったが、当時は最低30店舗以上の店舗を持つ企業向けのAPI連携版しかなく、いったんは導入を諦めた。

「当初、ソフトバンクさんの『サキミル』は条件的に導入できないことが分かり、ほかにAIを使った売上予測サービスがないかいろいろ検索して導入したこともあります。しかし、実際の売り上げと予測との乖離率が20%にもなることが結構頻繁にあったので、これは全然ダメだと思って3カ月で解約しました」(長谷川氏)

その後、システム連携が不要で、1店舗からでも導入が可能なWebダッシュボード版の「サキミル」がリリースされたというメルマガを見て再度問い合わせし、2024年2月から5月までトライアルを実施したのち、6月より本格導入を決めた。

AI需要予測の技術的特徴

「サキミル」は、ソフトバンクと日本気象協会が共同開発した機械学習ベースの需要予測エンジンである。以下の多変量データを統合・分析することで、従来の「勘」では捉えきれない微細な需要変化を予測する。

  • 高解像度気象データ:気温・降水量に加え、日射量・風速・湿度など日本気象協会が提供する詳細な項目
  • 匿名化人流データ:店舗商圏内の人流動態を統計化したデータ
  • カレンダー・イベント情報:曜日、祝日、近隣施設(美術館等)の催事スケジュール
  • 店舗POSデータ:過去の来店客数および売上実績

これらのデータをAIが相関分析し、例えば「気温が急上昇した際の商品嗜好の変化」や「イベント開催による人流増加の波及効果」を数値化。予測結果はWebダッシュボードを通じて提供され、現場での製造数決定の客観的指標となっている。

導入の決め手

「サキミル」の導入を最終的に判断した決め手は、予測精度と信頼性だった。

「予測が完全に一致することもあり、他社製品に比べ、精度が高いと感じたからです。また、こうしたAIの売上予測サービスを提供するにはかなり投資が必要だと思ってます。小さなベンチャー企業ではシステム開発も難しいと思っているので、そういう点ではソフトバンクさんのように資本がしっかりとしてるところの方が安心できると思っています。その点で、僕はソフトバンクさんに賭けています。また、提案やアフターフォローについてもとても手厚くやってくださったので、文句なく素晴らしいと考えています」(長谷川氏)

店舗での活用の仕方

ブルックリンでの日々の「サキミル」の活用の仕方は以下の通りだ。

「朝4時から5時ごろに、私が『サキミル』の今日の予測を確認し、経験も踏まえた上で7時のオープン前の朝礼でスタッフに売上見込みを伝え、それに合わせて準備をしてもらっています。ただ、『サキミル』の当日の正確な情報は9時に更新されるため、9時になった時点でもう一度予測数を確認し、朝の予測との差分があるかを確認しています。予測があっていたかどうかを確かめるためには、18時の閉店後に販売スタッフがその日の来店客数をタブレットに入力しています」(長谷川氏)

PCではなく使い慣れていないタブレットで使用していることもあり、最初は分かりにくい部分もあったが、何度か使うことで問題なくなったという。

After

定量的成果

トライアル期間の実績として、以下の成果が得られた。

予測精度:3%向上

予測精度が向上し、より正確な製造計画が可能になった。

廃棄量削減:最大2,700個/月

予測精度が上がることで、作らなければならないパンの量に合わせてシフトを調整でき、廃棄ロスが大幅に削減された。

「『サキミル』によるAI予測と製造リーダー陣の勘と経験を踏まえることができるようになり、実際目に見えて起こっているのは廃棄ロスの削減です。昔は1日に200個、300個と残ってしまい、どうしようという状態でしたが、最近は残っても100個以内に収まっており、大量に余ることがなくなりました」(長谷川氏)

販売機会ロスの削減

「もう1つはその逆で、販売機会ロスの削減です。パンが売り切れてしまって早く閉店しなければならないことが昔は月に3日くらいありましたが、今は1日あるかないかという状態になってきています」(長谷川氏)

長時間労働の削減

「残業時間についてもいろいろな要素がありますが減っています」(長谷川氏)

スタッフの意識変化

「AIが予想したのを見て、『ちょっと違うんじゃないか』『どうしてこうなるんだろう』と考えるきっかけになることもあります。そのときに何か確信できるものがあれば、自分たちの勘を信じて調整しますし、結果的にそれが当たっていたときは良かったなと思います。AIに負けないぞっていう気持ちもあります」(丸田氏)

「ほんとにAIの予測よりもよいものにするぞという気持ちは、製造リーダー陣からすごく伝わってきます。ただ、そうはいってもやはり製造リーダー陣の経験や勘で成り立っている状態はあまりよくないので。例えば誰かが新しいリーダーに昇格したときに、その人の勘がズレてしまうようではまずいので、AI予測というツールが1つあるだけで変わってくるかなと考えています」(長谷川氏)

今後の展望

「うちは2店舗あるので、予測の精度が乖離率5%以内で継続的にできるようになったら、今導入している本店に加えて、もう1店舗にも広げていきたいなと考えています。あともう1つ、これはベーカリー業界全体の話になるのですが、やはりフードロスと長時間労働というのが非常に問題になっている業界なので、ほかのベーカリーの社長さんたちにも『サキミル』は本当に当たるので、ぜひ導入した方がいいですよと、これまで以上に伝えていきたいなと考えています」(長谷川氏)

自身の店舗がモデルケースとなり、上記課題解決に向けたAI活用をさらに進めていくことで、日本全国のパン・洋菓子店を救いたいという思いを持つブルックリン。その取り組みは、これからもさらに続いていく。

公式出典あり この事例の効果数値は、企業のプレスリリースまたは公式発表に基づいています。 出典を確認

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公開日: 2024年8月1日

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