バローホールディングス:AI×気象データで来店予測精度93%、1,200店舗の在庫管理を本部主導へ

スーパー・ドラッグストア・ホームセンターなど約1,200店舗を運営するバローホールディングスがAI需要予測「サキミル」を導入。日本気象協会の詳細気象データを活用し来店予測精度93%を達成。店舗の属人化した発注から本部主導の在庫管理へ転換。

+93 %予測精度
数値の信頼性
公式出典あり
予測AI

この事例のポイント

導入効果
+93%予測精度
業種
小売(EC)業
導入分野
物流

Before

バローホールディングスは、グループ企業の「スーパーマーケットバロー」「Vドラッグ」「ホームセンターバロー」など、約1,200店舗を展開する総合小売企業である。多業態展開する中で、需要予測には以下の2つの課題があった。

商品の売れ方の違い

スーパーマーケットやドラッグストアでは、日持ちしない日配品を取り扱っており、在庫を多く抱えると廃棄の可能性が高くなる。過不足なく売り切ることが必要である。一方でホームセンターでは、今日明日で消費期限を迎えるような商品は多くない。商品の売れ方に違いがあるため、ひとくくりのロジックで需要予測を行うことは困難だった。

投資とのバランス

例えば、100SKUの商品に対して毎日需要予測をすると、運用だけで月額百万円以上がかかる費用感になる。店舗には1万SKU以上の商品を取り扱っており、全商品を需要予測するとコストとして現実的ではなかった。

また、商品の発注管理は各店舗の担当者が経験をもとに行っており、担当が変わると在庫の過不足が大きくなるという課題もあった。本部からの指示は全店舗統一で動いてもらうことは難しく、時間もかかる状況だった。

AI導入内容

客数予測アプローチの採用

これらの問題から、商品予測ではなく客数に対応する需要予測 「サキミル」 を選んだ。

「本部が在庫の持たせ方をコントロールできることもメリットです。バローホールディングスでは約1,200店舗ありますので、指示を出しても全店舗統一で動いてもらうことは難しいですし、時間もかかります。年末で在庫を多めに持つ、期末で在庫を抑えるといった調整も本部主導でできるようになりました。店舗担当者の属人的な運用から本部での一括運用にすることで、店舗ごとの在庫管理のばらつきも少なくなっています」(近藤氏)

気象データを活用した予測

「サキミル」の強みは日本気象協会の詳細な気象データを活用している点にある。

「過去、小売業界でもコンビニなどで気象データの活用がされていると思いますが、バローホールディングスではこれまでインターネットで天候を調べる手法しか行っていませんでした。台風や大雪が近いと分かったら、前年の同じ天候のときの売り上げと比較して予想するのです。天候に対する変化には、担当者の経験で対応していました。『サキミル』では気象データも加えたうえで客観的な予測ができるので、大きな利点だと考えています」(芳尾氏)

他社のサービスでは、降水量といった簡易的なデータ活用はできるものの、気温や日射量、風速、湿度などの詳細なデータまで活用することはできなかった。「サキミル」は日本気象協会のデータを加味した予測を行っているので、その正確さも強みだと感じている。

技術的構成

「サキミル」は、日本気象協会の詳細な気象データと機械学習を用いた需要予測モデルを統合したSaaS型プラットフォームである。以下の多変量データを高度に分析し、翌日の来店客数を予測する。

  • 過去の来店・売上データ:各店舗のPOSデータに基づいた来客パターンの学習
  • 詳細気象データ:日本気象協会が提供する気温・降水量・日射量・風速・湿度などの多項目データ
  • 人流統計データ:ソフトバンクグループが持つ匿名化・統計加工済みの位置情報データ(商圏内の人口流動)
  • カレンダー情報:曜日、祝祭日、大型連休、および特異な催事情報

AIモデルはこれらの変数間の複雑な相互作用(例:「雨の日のポイントアップデー」の減衰効果やその翌日の反動増)を学習。予測精度は 1-MAPE(平均絶対パーセント誤差の補数) などの指標で評価され、実証実験では93%という極めて高い精度を達成している。

After

高い予測精度の達成

グループ企業の中部薬品株式会社で実証実験を行った結果、来店予測の精度については 93% と高い結果が得られた。

「来店客数の予測が生み出した利益の一部を投資に充てるなどして、今後さらに精度は向上し続けていきたいと考えています」(近藤氏)

フードロスの改善

気象データによる効果も明確になった。

「雨の日と、その後の客数予測でも結果が出ています。ドラッグストアでは、曜日によってポイントアップデーを設定していますが、そのときに雨が降ると通常の日以上に来店数が減少していました。これを予測できてないと、過剰に発注をしてしまい廃棄ロスにつながります。

一方で、雨のためポイントアップデーに来店されなかったお客さまが、その翌日にいらっしゃることもあります。この増加も予測して発注しないと機会ロスにつながってしまいますが、『サキミル』では、これらの影響も踏まえて計算されていました。ここで機会ロスや廃棄ロスが多く出ていたのだと、実証実験で明確に分かりました」(芳尾氏)

これまではチラシなどの販促に合わせた予想しかできなかったが、雪や台風の影響、地域ごとの影響まで考慮した予測が可能になった。

本部主導の在庫管理実現

店舗の属人的な発注から本部主導の統一的な在庫管理へ転換し、以下の効果を得た。

  • 在庫管理のばらつき削減:全店舗で統一基準に基づく発注判断が可能に
  • 戦略的在庫調整:年末の在庫増や期末の在庫抑制など、本部戦略に沿った在庫制御が可能に
  • フードロス削減:気象データを考慮した予測により、機会ロスと廃棄ロスの双方を改善

今後の展望

「惣菜や弁当などのデリカを生産している企業でも、来店予測のデータを利用できないかという事を考えています。デリカ商材は、基本的には購入した当日に食べる商品になりますので特に客数と販売数の相関性が高く、機会ロスを減らす代わりに廃棄ロスが増えるという構造になってしまっています。

将来的には、来店客数の予測データから最適な製造計画数を予測し、その製造計画数を確保するために最適な量の材料を確保する。そうして欠品も廃棄も良化できるように、データを活用していきたいと考えています」(芳尾氏)

「予測には気象データだけでなく人流統計データも含んでいますので、今後人の動きが大きく変わったときにも柔軟に対応できることを期待しています」(近藤氏)

日本では多くの食品が廃棄されており、大きな社会問題となっている。「サキミル」を通してデータやAIなどのテクノロジーを活用し、フードロスの削減や生産性の向上に貢献することでSDGs(持続可能な開発目標)の達成を支援していく。

公式出典あり この事例の効果数値は、企業のプレスリリースまたは公式発表に基づいています。 出典を確認

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公開日: 2022年2月1日

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