竹隆庵岡埜:AI需要予測で和菓子の廃棄57%削減、経験依存からデータ駆動へ

老舗和菓子店がAI需要予測サービス「サキミル」を導入。店長の「勘」に頼っていた発注からデータ駆動型へ転換し、廃棄ロス57%削減。売れ残りの心理的負担軽減と販売機会の最大化を両立。

+57 %廃棄削減
数値の信頼性
公式出典あり
予測AI

この事例のポイント

導入効果
+57%廃棄削減
業種
小売(EC)業
導入分野
生産・製造

Before

竹隆庵岡埜は、東京都上野を拠点に地域の人々に愛される老舗和菓子店である。看板商品の「こごめ大福」をはじめ、季節ごとの生菓子を毎朝手作り、その日のうちに売り切ることを基本とした運営を行ってきた。

しかし、発注業務は各店舗の店長やベテランスタッフの経験に依存しており、販売数量の予測は「勘」に頼らざるを得なかった。常務取締役の吉原氏は次のように語る。

「各店の店長が経験から『明日はこれくらい売れるだろう』と発注数を決めていました。うまく的中すればいいのですが、売れ残れば処理に困り、逆に欠品すれば販売機会を逃してしまいます。そのため、どうしても『売れ残りは避けたい』という心理が働き、少なめに発注してしまう傾向が強かったです。また、特に気温が高い日や寒い日には来客数が変動しやすく、販売計画を立てづらい状況でした」

フルーツを扱う商品の場合は、原材料となる果物を数日前に発注する必要があり、先の天候や来客動向を正確に見極めることが難しいという構造的な課題もあった。期間限定商品の「ぶどう大福」では、50個発注したうち20個が売れ残る事例も発生しており、課題は顕在化していた。

AI導入内容

導入の経緯

同社は以前にもAI予測サービスを検討したことがあったが、コロナ禍の影響で店舗運営が不安定になり導入を断念していた。その後、再び需要予測の重要性を認識し、Web検索を通じてソフトバンクのAI需要予測サービス 「サキミル」 に出会った。

「問い合わせをした際の対応がとても丁寧で信頼できたこともあり、まずはトライアルを実施してみることにしました」(吉原氏)

トライアル中は毎日の予測値を現場に提示し、実際の来客数との乖離を確認した。すると「予測は大きく外れない」という実感が現場で共有され、当初は懐疑的だったスタッフからも理解を得られるようになった。

導入の決め手

本契約の決め手となったのは、予測精度と使いやすさ、そしてコストだった。

「日本語で提供されるサービスなので現場への展開がしやすいこと、そしてトライアルの時点で予測がかなり的確だったことが大きな理由です。さらに、価格の面でも手頃で導入のハードルが低いと感じました」(吉原氏)

AI需要予測の仕組み

「サキミル」は、日本気象協会の詳細な気象データと機械学習を用いた需要予測モデルを組み合わせたSaaS型サービスである。以下の多変量データを統合・分析することで、高い精度で翌日の来客数を予測する。

  • 気象データ:気温・降水量に加え、日射量・風速・湿度など日本気象協会が提供する高精度な気象情報
  • 人流統計データ:店舗周辺の人口動態を反映した、匿名化・統計加工済みの人流情報
  • 曜日・祝日情報:週周期性や連休による来客パターンの変化
  • 過去の売上データ:店舗独自のPOSデータ(過去の来客数・販売実績)
  • 地域イベント情報:周辺施設での催事や年金支給日などの特異日要因

AIはこれらの多種多様なデータを相関分析し、店長の経験則では捉えきれない「天候とイベントの複合的な影響」などを数値化。予測結果はWebダッシュボード上で「予測根拠」とともに提示されるため、現場での納得感の高い発注判断を支援している。

After

導入後、日暮里店を中心に運用を開始した結果、売れ残りが減少し、販売機会を逃すリスクも抑えられるようになった。

廃棄削減:約57%

「サキミルの予測を根拠に『この数字で発注しました』と説明できるので、担当者は安心して判断できるようになりました。売れ残りが一番の悩みでしたが、そのストレスが軽減されたのは大きいです」(吉原氏)

従来の属人的な「勘頼み」から、客観的な「データに基づく判断」へと意識が変化した。さらに、AI予測が共通の基準となったことで、スタッフ間の会話や意思決定もスムーズになったと言う。

「一番理想なのは閉店時間ギリギリに売り切れること。サキミルを活用するようになってから、昨年度と比較し、約57%廃棄を削減できました」(吉原氏)

こうした取り組みにより、欠品や過剰在庫のリスクを抑えながら、販売機会の最大化を実現した。従業員の心理的余裕も生まれ、接客や販売といった本来の業務に集中できる環境づくりに寄与している。

今後の展望

「現在は日暮里店のみで活用していますが、将来的には本店や他店舗にも展開したいと考えています。人手不足の中で現場の負担を減らすことが大きなテーマです。AIによる需要予測の活用を広げ、スタッフには接客や販売といった本来の業務に専念してもらいたいですね」(吉原氏)

さらに、竹隆庵岡埜ならではの顧客特性を踏まえたAI活用にも期待を寄せている。

「うちのお客さまは年齢層が高いので、天候や年金支給日などの要素で来客数が変わります。将来的には、そういった要因を少し調整できるような仕組みになったらいいなと思います」(吉原氏)

今後は、AIを店舗運営の「判断パートナー」として位置づけ、より地域密着型の販売最適化を目指す方針である。伝統的な和菓子づくりの精神を守りながら、データとテクノロジーの力で次世代の店舗経営に挑戦していく。

公式出典あり この事例の効果数値は、企業のプレスリリースまたは公式発表に基づいています。 出典を確認

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公開日: 2025年11月1日

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