Before
セブン-イレブン・ジャパンは全国に約21,000店舗を展開する日本最大のコンビニエンスストアチェーンである。店舗運営の効率化と商品供給の安定化は、圧倒的な店舗数を抱える同社にとって最重要課題であった。
従来の発注業務は「設定発注」と呼ばれる方式を採用していた。店舗従業員が手動で在庫数を設定し、在庫が一定数を下回った際にストア・コンピューター(SC)が発注数を計算・提案する仕組みであった。しかし、この方式には以下の課題があった。
まず、在庫が減ってから発注するため、納品までのリードタイムを考慮すると品切れが発生するリスクがあった。人気商品が品切れになると販売機会を失うだけでなく、顧客満足度にも影響を及ぼす。一方で、安全在庫を多めに設定すると廃棄ロスが増加し、コスト圧迫につながっていた。
また、発注設定の入力作業は店舗従業員にとって大きな負担となっていた。曜日や天候、地域のイベントなどに応じて適切な発注数を判断するには経験が必要で、新人スタッフは特に苦労していた。発注業務に多くの時間を割くことで、接客や売場づくりなど本来注力すべき業務に充てる時間が奪われていた。
本社業務においても課題はあった。膨大な量の議事録作成や稟議書の起案、過去データの検索などに多くの工数がかかっており、生産性向上が喫緊の課題となっていた。
AI導入内容
セブン-イレブン・ジャパンは店舗運営の効率化と商品供給の安定化を目的として、2023年より全店舗にAI発注システムを導入した。さらに、2023年からは生成AIの社内活用も進め、2025年8月をメドに13種類の大規模言語モデル(LLM)を使い分けられる生成AI基盤を約8,000人の全社員に展開する計画である。
AI発注システム
AI発注システムは、天候や曜日特性、過去の販売実績などのデータをもとに需要予測を行い、適正な在庫数を算出するシステムである。
予測に使用するデータ:
- 過去の販売実績(POSデータ)
- 天候情報
- 曜日特性
- 地域のイベント情報
- 季節要因
AIはこれらのデータを統合的に分析し、商品ごと・時間帯ごとの需要パターンを学習する。在庫がなくなる前に発注が行われるため、品切れの防止につながる。従来の「在庫が減ってから発注」から「需要を予測して事前発注」へのパラダイムシフトを実現した。
生成AI基盤「AIライブラリー」
2025年6月時点で20部門、約4,000人の社員が利用している生成AI基盤である。13種類のLLMを使い分けられるのが大きな特徴で、用途に応じて最適なモデルを選択できる。
使用可能なモデル:
- Anthropic「Claude Opus 4」「Claude Sonnet 4」「Claude Sonnet 3.7」「Claude Sonnet 3.5」
- Google「Gemini 2.5 Pro」「Gemini 2.5 Flash」「Gemini 2.0 Flash」
- OpenAI「OpenAI o3-mini」「OpenAI o1」「GPT-4.1」「GPT-4o」
- 画像生成モデル:Google「Imagen 4」、OpenAI「DALL·E 3」
システム本部が各モデルの回答の精度や速度を評価し、向いている用途などの特徴を示している。例えば、アンケートの集計など入力文章の量が多い用途ではGemini 2.5 Proを、高い推論能力を求める場合はOpenAI o1やo3-miniを推奨する。
UI面でも工夫しており、1つのプロンプトを入力すると複数モデルの回答を横並びで比較できる機能を実装している。
After
AI発注システムと生成AI基盤の導入により、セブン-イレブンは以下の定量的成果を達成した。
発注業務時間:約40%削減
AI発注システムの導入により、店舗従業員による入力作業が大幅に削減され、発注業務にかかる時間を約40%削減することができた。これにより加盟店では、発注業務にかかる時間を他の業務に充てることが可能となり、品揃えの見直しや売場づくりなど、店舗価値の向上に向けた取り組みがより充実している。
品切れ防止と在庫最適化
在庫がなくなる前に発注が行われるため、品切れの防止につながった。適正な在庫数の維持により、廃棄ロスの削減と販売機会の最大化を両立させている。
議事録作成の効率化
生成AI基盤の活用により、議事録の作成において1会議あたり平均40分程度かかっていた作業時間を平均10分に短縮した。75%の時間削減を実現している。
稟議書作成の効率化
稟議書の起案業務においては、社内規定の把握や関連部署への問い合わせ、過去データの検索、文面作成などに生成AIを活用し、作業時間は3時間から1時間ほどに短縮した。約67%の効率化を達成している。
セブン-イレブン・ジャパンは、AI発注システムの本格稼働と生成AI基盤の全社展開により、店舗とお客様の双方にメリットのある省人化を推進し、働きやすい環境づくりと顧客体験の向上を両立させている。
公開日: 2023年12月1日
事例一覧に戻る