Before
東急不動産は、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」に基づき、DXを通じた「顧客接点の高度化による感動体験の創出」を推進していた。しかし、不動産販売の現場では、顧客が建物の質感や景観、共用部の雰囲気を正確にイメージするためには、実際にモデルルームを訪れることが一般的だった。
この従来型の販売アプローチには、以下の課題があった。
- 環境負荷:標準的なモデルルームの建設、運営、撤去には多くの資材と廃棄物が発生し、サステナビリティの観点から改善が必要だった
- 顧客の時間的・地理的制約:遠方に住む顧客や忙しい顧客にとって、複数回の来場は大きなハードルとなっていた
- 情報の限界:従来のCGパースは静止画に留まり、自由な視点からの体験や日影・計測シミュレーションなど、インタラクティブな体験が提供できていなかった
先進技術導入内容
2022年7月、東急不動産はアクセンチュア株式会社と戦略的パートナーシップを締結。アクセンチュアソングが主導し、世界最高峰のCGI(Computer Generated Imagery)技術を活用して、同社住宅事業の基幹ブランドである分譲マンション「BRANZ」のデジタルツイン制作に取り組んだ。
デジタルツインコンテンツの特徴
本デジタルコンテンツは、住戸内からの景観の見え方、素材の質感に至るまでリアルな表現を実現。日影シミュレーションや計測シミュレーションなど、デジタルツインが持つ精緻なシミュレーションツールの強みを最大限に活かし、モデルルーム見学と遜色のない体験価値、さらに一部ではモデルルーム以上の情報体験を提供する。
外観や共用部など、従来は静止画のCGパースで提供していた情報も、ウォークスルーとして自由な視点で体験できる。顧客は契約時点で、従来よりも可視化しやすい状態で建物情報を得ることができる。
技術的裏付け
アクセンチュアソングは、人気海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のVFX(視覚効果)を手がけた世界最高峰のCGI映像制作チームを擁する。大手自動車メーカーでは、デジタルツインを基に新車のコンフィギュレーションサービスやテレビCM、カタログなど広告素材の99%をCGに置き換える実績もある。この高度な映像技術が、不動産業界にもたらされた。
導入ロードマップ
まずは都内で販売予定のブランズ4物件において、デジタルコンテンツを活用した販売に取り組む。販売拠点の集約化を順次進め、標準的なモデルルームの建設・運営・撤去による環境負荷を低減する。
After
デジタルツインの導入により、東急不動産は不動産販売のあり方を大きく変革しつつある。
顧客体験の向上
顧客は来場しなくとも、自宅から自由な視点でマンションの内外を体験できる。日影の動きや部屋の寸法感まで確認できるため、購入判断の質が向上し、購入後の認識ギャップも縮小する。
サステナビリティへの貢献
モデルルームの建設・撤去に伴う資材の消費と廃棄物の発生を削減。デジタルコンテンツをベースとした販売活動の推進は、同社の環境負荷低減目標に直結する。
ライフサイクル顧客接点の創出
ブランズの販売に留まらず、入居以降まで継続的な顧客接点を生み出す。住まいのライフサイクルを通じた新しい共創型事業開発への挑戦が可能となった。
本取り組みは、不動産業界におけるデジタルツイン活用の先駆的モデルとして、今後の住宅販売の標準形となる可能性を秘めている。
公開日: 2022年1月1日
事例一覧に戻る