Before
住友不動産販売は全国に広がる「直営仲介ネットワーク」を強みとする不動産仲介のリーディングカンパニーである。不動産の売却を検討する顧客にとって、「自分の物件がいくらで売れるのか」を迅速かつ正確に把握することは、住み替え計画を立てる上での最重要事項である。
しかし、従来の査定サービスには以下の課題があった。
戸建て・土地の査定の難しさ マンションは同一棟内での成約事例が多く比較が容易だが、戸建てや土地は形状、接道状況、建築制限、周辺環境などが一物件ごとに大きく異なり、AIによる自動査定の精度を確保することが技術的に困難だった。
査定までのリードタイム 正確な査定価格を得るためには、担当者が現地調査や役所調査を行う必要があり、数日の時間を要していた。Web上の簡易査定は存在したが、実際の市場価格との乖離が大きい場合もあり、顧客の期待に応えきれていなかった。
売却検討の心理的ハードル 「いきなり営業担当者と話すのは抵抗があるが、相場は知りたい」という潜在的な売却検討層に対し、手軽かつ信頼できる情報提供手段が不足していた。
AI導入内容
住友不動産販売は、自社が保有する膨大な成約事例データと最新の機械学習技術を組み合わせた「ステップAI査定」を開発・導入した。
システム構成とアルゴリズム
学習データとカバレッジ
- 膨大な実成約データ:全国の直営ネットワークを通じて蓄積された、過去から現在に至るまでの膨大な成約価格情報を教師データとして活用。
- マルチタイプ対応:マンションだけでなく、土地、一戸建ての3タイプすべてにおいて高精度な予測モデルを構築。
技術的アプローチ AIモデルの構築には、勾配ブースティング決定木(XGBoostやLightGBM等)を中心としたアルゴリズムを採用し、以下の多次元的な特徴量エンジニアリングを実施している。
- 地理的要因の高度解析:単なる駅距離だけでなく、用途地域、建蔽率・容積率、接道状況(幅員・方位)、土地の形状(整形・不整形)を数値化。
- 建物個別要因の評価:一戸建てにおいては、延床面積や築年数に加え、構造、工法、リフォーム履歴等の影響を重み付け。
- 市場トレンドのリアルタイム反映:周辺エリアの最新の売り出し価格推移や、景気動向指数を統合して予測価格を補正。
ユーザーインターフェース
ユーザーはスマートフォンやPCから物件情報を入力するだけで、最短60秒で査定結果を確認できる。
- 即時性:24時間365日、いつでも即座に査定価格を提示。
- 透明性:査定価格の根拠となる近隣の類似成約事例や、価格推移グラフも同時に表示し、信頼性を高めている。
After
ステップAI査定の導入により、住友不動産販売は以下の成果を達成した。
顧客体験の革新
- 最短60秒のスピード査定:査定を待つストレスを解消し、売却検討の初期段階で必要な情報を即座に提供。
- 土地・戸建への対応拡大:これまで自動査定が難しかった物件タイプにも対応したことで、より幅広い顧客層の獲得に成功。
ビジネスインパクト
- 新規見込み客の獲得(リード獲得):手軽なAI査定を入り口にすることで、Webサイトからの売却相談依頼数が大幅に増加。
- 営業活動の質的向上:AI査定を通じて適正な相場観を持った顧客との商談が増え、査定価格の合意形成がスムーズになった。
- 査定業務の標準化:担当者の経験値による査定価格のばらつきをAIが補完し、社内全体の査定品質をボトムアップ。
定性的効果
- ブランド信頼度の向上:膨大な自社データを活用した「嘘のない」査定価格の提示により、大手仲介会社としての信頼を再構築。
- DX推進の加速:AI査定を起点として、契約手続きの電子化やオンライン相談など、顧客接点全体のデジタル化を加速させている。
住友不動産販売は、今後もAIモデルの精度向上を継続するとともに、顧客一人ひとりのニーズに応じたパーソナライズされた提案機能の拡充を目指している。
公開日: 2024年1月1日
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