Before
不動産の価格査定とは、不動産売買に精通した査定担当者が自らの経験を活かし、市場動向等も考慮した上で、実際に売買された取引事例と比較しながら価格を算出する業務である。
東急リバブルにおいても、査定業務には以下の課題があった。
査定精度のばらつき 査定価格は査定担当者の経験値や市場動向の捉え方、比較する取引事例の選び方の違いによって差異が生じ得る。一般的な査定ルールや社内のチェック体制によって品質は維持されているが、属人的な要素を完全に排除するのは困難だった。
査定業務の工数 査定担当者は対象不動産や周辺エリア、近隣の取引事例に関する情報を収集・分析し、類似性の評価を行う。この一連の作業には相当の時間と専門知識が必要であり、効率化が課題となっていた。
スピーディなサービス提供の限界 より質の高い売却サービスをスピーディにお届けするためには、査定業務の効率化と標準化が不可欠だった。
AI導入内容
東急リバブルは株式会社Ristと共同で「不動産の価格査定AIシステム」を開発し、2024年2月14日に特許(特許第7437560号)を取得した。
システムの特徴
暗黙知を構造化するAIモデル 本システムは、東急リバブルが培ってきた「査定ルール(形式知)」と、ベテラン査定担当者が物件の希少性や方位・階数・景観等の要因をどう評価するかという「経験則(暗黙知)」の両方を学習。
アルゴリズムと技術選定 AIモデルの構築には、表形式データの予測に定評のある 勾配ブースティング(Gradient Boosting Decision Tree等) やディープラーニングを含む複数のアンサンブル手法を採用。
- 高度な特徴量エンジニアリング:
- 単なる「階数」ではなく「所在階/総階数」の比率や、周辺物件との価格乖離度(アウトライヤー検知)
- 「駅からの距離」に加え、特定エリアにおける駅力の強弱(乗降客数や商業集積度)を数値化
- 物件のブランド力(デベロッパー・ゼネコン)をカテゴリ変数として反映
- 査定データの学習(1,000件超): 東急リバブルの査定担当者が実際に「何を見て価格を決めたか」という判断プロセス(アノテーション)を含む、高品質な教師データを1,000件以上学習。
達成精度
| 対象物件タイプ | MER値(誤差率中央値) | 検証データ数 |
|---|---|---|
| マンション版 | 1.98% | 96件 |
| 土地戸建版 | 3.88% | 95件 |
※MER(Median Error Rate):誤差率の中央値。MERが小さいほど推定精度が高いことを意味する。マンション版で2%を切る精度は、熟練の査定担当者の判断と極めて近い水準。
共同開発体制
| 会社 | 役割 |
|---|---|
| 東急リバブル | 査定担当者の知見提供、査定データの用意、実務適用 |
| Rist | データサイエンティストによるAIモデル開発 |
両社の知見を融合させることで、高精度なAI査定システムの実現に至った。
After
AI査定システムの導入により、東急リバブルは以下の定量的・定性的効果を達成した。
定量的効果
サービス利用実績(2024年2月末時点)
- 22プロジェクトで展開
- 320組を超えるお客様にご利用いただく
査定業務の効率化
- 査定業務の高度な標準化:AIによる査定でばらつきを抑制
- 査定に係る業務時間の短縮:生産性の向上を実現
定性的効果
- 質の高い売却サービスのスピーディ提供:査定業務の効率化により、顧客へのサービス提供が迅速に
- 査定担当者の負担軽減:定型的な査定業務をAIが担うことで、担当者はより複雑なケースや顧客対応に集中可能に
- 顧客満足度の向上:標準化された高精度な査定により、適正価格での売却サポートが可能に
実用化の展開
東急リバブルは本システムを活用し、以下のサービスを提供している。
| 開始時期 | サービス内容 |
|---|---|
| 2023年4月 | 新築マンション販売における「マンション版 価格査定AI」活用開始 |
| 2023年12月 | 「土地戸建版 価格査定AI」活用開始 |
買換えのご相談(お客様が所有している不動産の売却資金を充当して物件購入を検討)において、AI査定を活用した査定サービスを提供している。
今後の展開
東急リバブルは、不動産業界におけるDX化のニーズの高まりを背景に、本AI技術の外部公開(サービス提供)も検討している。業種業界を問わず、様々なニーズを持つステークホルダーに対し、高精度なAI査定技術を広く提供することを目指している。
本システムの特許取得は、不動産テック分野における技術的優位性を示すものであり、今後のビジネス展開の基盤となる。
公開日: 2024年3月5日
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