Before
不動産の管理や売買において、建物の状況把握は重要な課題である。特に建物のひび割れ(クラック)は、構造的安全性や修繕必要性を判断する上で重要な指標となるが、従来の診断方法には以下の課題があった。
目視診断の限界 建物検査におけるクラックの発見・計測は、検査員の目視と手作業によるものが中心だった。広大な建物全体を網羅的に検査するには多くの時間と労力を要し、人的ミスのリスクも存在した。
診断品質のばらつき 検査員の経験や技能によって、クラックの発見精度や深刻度の判断にばらつきが生じる可能性があった。客観的かつ標準化された診断基準の適用が困難だった。
記録・報告の煩雑さ 発見したクラックの位置、長さ、幅等を手作業で記録し、報告書にまとめる作業は煩雑で時間を要した。
修繕判断の遅延 診断結果の整理に時間がかかることで、修繕の優先順位付けや費用見積もりの作成が遅延し、適時適切な対応が困難になるケースがあった。
AI導入内容
東急リバブルは建物のひび割れ(クラック)をAI画像解析で自動検出・診断するシステム「CRACK SCANNER」を開発し、特許第7124995号(令和4年8月16日登録)を取得した。
システム構成
深層学習(ディープラーニング)による画像解析 建物外壁等の高解像度画像を セマンティック・セグメンテーション(Semantic Segmentation) 技術を用いてピクセル単位で解析。背景(外壁面)からひび割れ部分のみを精密に分離・抽出する。
- 高精度検出:従来の手法では困難だった、経年変化による汚れや影とひび割れを、多層ニューラルネットワーク(CNN)により高い精度で識別
- 微細クラックへの対応:数ピクセル程度の微細なヘアクラックも、ノイズ除去技術と組み合わせて安定的に検出
自動計測・診断アルゴリズム 抽出されたクラックの形状データに基づき、以下の値を自動算出する。
- 幅の計測:クラックの主要な線分に対して垂直方向のピクセル数を、画像内の基準スケール(タイルの目地幅等)と照合してmm単位で算出
- 長さの計測:クラックの端点間を結ぶ経路をトラッキングし、実寸長を推定
診断・評価エンジン 建築基準法や各種維持管理指針(国土交通省等)に準拠した判定ロジックを搭載。クラックの幅が「0.3mm以上(構造的な影響の懸念)」等の閾値に基づき、修繕の緊急度をA~Dの4段階で自動評価する。
レポート自動生成 解析結果をCADデータやPDF形式の報告書として即座に整理。損傷箇所の位置図(プロット図)も自動生成される。
活用シーン
| シーン | 活用内容 |
|---|---|
| 定期建物調査 | 管理物件の定期検査における効率化と品質向上 |
| 売買時の状況調査 | 中古物件売買時の建物状況把握 |
| 修繕計画策定 | 長期修繕計画の策定に向けた客観的データ収集 |
| 災害後の緊急調査 | 地震等災害発生後の迅速な被害状況把握 |
After
CRACK SCANNERの導入により、東急リバブルは以下の効果を達成した。
業務効率の向上
- 検査時間の短縮:AIによる自動検出で、検査作業にかかる時間を大幅に削減
- 記録作業の自動化:計測・記録の自動化により、事務作業の負担軽減
- レポート作成の効率化:検査結果から報告書を自動生成
診断品質の向上
- 客観的な評価基準:AIによる標準化された診断で、ばらつきの少ない品質を実現
- 見落としの防止:人間の目では見落としがちな微小なクラックも検出可能に
- データ蓄積による分析:時系列のデータ蓄積により、劣化の進行状況を追跡可能に
顧客満足度の向上
- 透明性の確保:客観的なデータに基づく診断結果の提示により、顧客の信頼獲得
- 迅速な対応:検査結果の即座の可視化により、修繕判断の迅速化
- コスト効率:的確な修繕計画策定により、無駄な修繕費用の削減
シナジー効果 東急リバブルはCRACK SCANNERと、以下のAIシステムと組み合わせることで、総合的な建物管理・売買支援サービスを提供している。
| システム名 | 役割 |
|---|---|
| AI査定システム | 不動産価格の算出 |
| CRACK SCANNER | 建物状況の診断 |
| 新築マンションレコメンドAI | 最適な物件の推薦 |
| Tellus Talk | 顧客対応チャット |
今後の展開
東急リバブルはCRACK SCANNERの精度向上と機能拡張を継続的に行い、建物管理・売買業務におけるデジタル技術活用のリーダーシップを維持していく方針である。また、他の不動産管理会社等へのライセンス提供等も検討し、業界全体の品質向上に貢献していく予定である。
公開日: 2023年1月1日
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