Before
ASMLは、今日のデジタル技術の多くを構成するシリコンマイクロチップの製造に不可欠な最先端装置を製造する世界唯一のメーカーである。わずか38年の間に、スタートアップ企業からヨーロッパ、アジア、米国の16カ国で3万2000人以上の従業員を抱える強力な多国籍企業へと成長した。
同社の提供するフォトリソグラフィ装置には約10万個もの部品が含まれ、輸送には40台の貨物コンテナ、3機の貨物輸送機、20台のトラックが必要という、極めて複雑な製品である。このような技術的複雑性を背景に、従業員のITサポートニーズも多様で高度だった。
2020年まで、同社は毎月200人の新入社員を迎え入れており、急速に拡大し地理的に分散しているチームに対して、優れたITサービスとサポートを提供する新しい方法を見つけることが極めて重要になっていた。
ASMLのEnterprise Service Management Center of Excellence and Innovation Managerである ラモン・デ・ブルーイン 氏は当時の課題を説明する。「当社のITサービスデスクは、世界中の従業員と請負業者からのサポートチケットを毎日約1000件処理していました。電話や電子メールの量を減らし、200人にのぼる第一線のサービスデスクエンジニアの貴重な時間を、より価値の高いプロジェクトやイノベーションに割く必要がありました」。
AI導入内容
この課題に対するASMLの解決策は、ServiceNowの仮想エージェントであるVioletの導入だった。Violetは、24時間365日のサポート、質問への即時回答、ユーザーの作業を容易にするためのより多くの情報へのアクセスを提供する。
ペルソナ設計と大規模ユーザビリティテスト
Violetの名前は、生産工程で使用する紫外線にちなんで付けられた。人間らしさを表現するために、実際の人間の人物像を想像してペルソナを作り上げた。「プロフェッショナルで有能でありながら、温かみがあり親しみやすく、人々が信頼して問題解決を任せられるような人物にしたかった」と、ServiceNowプロダクトオーナーのボー・チャイトラム氏は語る。
開発プログラムでは、ASMLの事業部門全体で3000人の従業員が参加し、各段階で大規模なユーザビリティテストを実施した。ユーザーエクスペリエンスの専門家が、新機能を分析し開発するための詳細なフィードバックを提供し、ソーシャルメディアのプラットフォームを利用してユーザーサーベイを実施した。
Virtual Agent「Violet」による高度な対話と自己解決
ASMLのITサービスデスク刷新の中核を担うのが、ServiceNowのVirtual Agentを基盤としたAIエージェント「Violet」である。
NLU(自然言語理解)による意図解釈の高度化 VioletはServiceNowの Natural Language Understanding(NLU) モデルを搭載し、キーワードマッチングから、文脈やニュアンスを含んだ「意図解釈」へと進化した。従業員が日常的な言葉で入力した内容を解析し、3万2000人という多様な従業員の背後にある真のニーズを特定する。英語を母国語としないユーザーに対しても、AIが語彙の揺らぎを吸収し、90%という高い「予測可能性(意図の正答率)」を達成した。
Predictive Intelligenceによる高度なマッチング AIで解決できない複雑なケースは、 Predictive Intelligence を活用した Advanced Work Assignment によって、対応可能なスキルを持つ専門エンジニアへ自動アサインされる。過去の対応履歴をAIが学習し、問題の種類や難易度に応じて最適な担当者をミリ秒単位で選定。これにより、エスカレーションされたチャットの80%が1分以内に応答される体制を実現した。
Microsoft TeamsへのAI統合
Microsoft Teamsとのシームレスな統合により、従業員は日常のコミュニケーションツールから直接「Violet」を呼び出し、AIの支援を受けることができる。パスワードリセットやSAPアクセス権限付与といった定型業務をAIが自動実行することで、ITエンジニアがより高度なイノベーションに注力できる環境を創出した。
After
Violetの導入により、ASMLは驚異的な成果を達成した。
6,000人の早期利用と80%のユーザー満足度
開始から数週間で、6000人以上の従業員がVioletの対応を受け、ユーザー満足度は80%を超えた。導入初期から多くの従業員に受け入れられ、ITサポートの利用形態を大きく変えた。
90%の予測可能性
ユーザーの意図を正しく診断して適切なトピックに誘導する能力を意味する予測可能性は、90%という驚異的な数値を記録した。これは、Violetがユーザーの問い合わせ意図を正確に理解し、適切な解決策やエスカレーションパスを提示できていることを示している。
サービスデスクエンジニアの負荷軽減
「電話や電子メールの量を減らすことで、200人にのぼる第一線のサービスデスクエンジニアの貴重な時間を取り戻すことができ、パスワードのリセットやSAPへのアクセスなどではなく、より価値の高いプロジェクトやイノベーションに時間を割くことができるようになりました」と、ラモン・デ・ブルーイン氏は語る。
将来への展望
「これはVioletの最初のバージョンにすぎません」とチャイトラム氏は語る。「今後、AI技術の向上やナレッジベースの拡充により、さらに洗練された製品に仕上げていく予定です」。将来的には、ASMLのPeople Portalの仮想エージェントとして、育児休暇の申請、施設の予約、ITに関する質問など、従業員に関するあらゆる問題をサポートする重要な役割を果たすと期待されている。
「ServiceNowは、Violetがビジネスにもたらす大きな価値を実証するのに役立ちました。また、これは他にも多くの業務分野の反復プロセスに拡大適用できるテンプレートとなります」と、ラモン・デ・ブルーイン氏は結論付けている。
公開日: 2024年1月1日
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