横河電機・JSR:世界初のAI自律制御で化学プラントを35日間連続制御

強化学習AI「FKDPP」により、化学プラントを世界で初めて35日間自律制御。品質安定化、高収量、省エネ制御を同時達成し、規格外品による損失をゼロに。

+35 日間のAI連続自律制御
数値の信頼性
公式出典あり
予測AI

この事例のポイント

導入効果
+35日間のAI連続自律制御
業種
製造業
導入分野
生産・製造

Before

資源、素材、産業材料などの精製・精錬を行うプロセス産業の「制御」は、石油精製、石油化学、高機能化学、繊維、鉄鋼、医薬、食品、水など多岐にわたる。いずれも化学反応などを伴い、極めて高い信頼性が求められる。

実プラントでは物理的、化学的な事象が複雑に影響する中での制御の難しさから、熟練運転員が自ら介入しなければならない箇所が数多く残っていた。PID制御やAPC(高度制御)を組んで「自動化」していても、一時的な降雨などに伴う急な外気温の変化に対応するためなどの理由で自動制御を中断し、熟練運転員が自ら設定値や出力値を変更しなければならない場合も多かった。

特にJSRの化学プラントの蒸留塔制御箇所では、「急激な外気温の変化」が制御の状態を乱す大きな「外的要因(外乱)」となっており、従来の制御手法では自動化できなかった。このような手動介入せざる得ない状況を、高いレベルの安全性を担保したうえで自律制御に移行することが現場の大きな課題であった。

AI導入内容

横河電機株式会社とJSR株式会社は共同実証実験を行い、世界で初めてAIが化学プラントを35日間(840時間)、自律制御することに成功した。

採用したAI技術:FKDPP

今回、制御で使用したAIは、2018年に横河電機と奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)が共同開発し、IEEE国際学会で「プラントへ活用可能な強化学習技術」として世界で初めて認められた FKDPP(Factorial Kernel Dynamic Policy Programming) というアルゴリズムである。

FKDPPの強みは以下の通りである。

  • 既存の制御手法(PID制御・APC)では自動化できなかった箇所に適用可能
  • 「品質と省エネの両立」のような相互干渉する目標に対応できる
  • 経験していない状況でもある程度自律的に制御できるロバスト性(頑健性)を持つ

実証実験の内容

実際のJSR化学プラントの蒸留塔において、留出物の品質や液面レベルを適切な状態に保ち、かつ排熱を熱源として最大限に活用するという複雑な条件をAIが満たす制御を実施した。

安全確保のために以下の過程を踏んだ。

  1. シミュレータ上での制御可能性の確認
  2. プラントを模した制御トレーニング装置での実験
  3. 実プラントへの段階的な適用
  4. 統合生産制御システム「CENTUM VP」との連携による安全監視

制御箇所の特徴

本実証実験では、PID制御やAPCが適応できず、運転員がバルブの操作量を自ら考えて入力する「手動制御のみでしか対応できなかった箇所」をAIが制御した。降雨や降雪などがある中でも、精製された製品は厳しい基準を満たし、既に出荷された。

After

本実証実験の結果、以下の成果が確認された。

品質の安定化 厳しい基準を満たした製品が連続して生産され、品質変動が大幅に抑制された。

高収量 原料から目的生産物を得る量(収量)が向上し、資源の有効活用が進んだ。

省エネ制御 排熱を熱源として最大限に活用する制御が実現され、エネルギー効率が改善された。

コスト削減 良品のみが生産されるため、規格外品が発生することによる燃料や人件费等の損失、時間的損失がなくなった。

運転員の負担軽減 熟練運転員が手動で介入しなければならない時間が大幅に減り、より高度な最適化業務に注力できるようになった。

JSRは本実証により、従来対応できなかった化学プラントの課題に対しAIが解決の一助となる可能性を見出すことができたと考え、他工程・他プラントへの応用を検討し、更なる生産性の向上に努めている。横河電機も「IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)」の実現に向け、世界中のお客様と自律制御AIに関する共創を加速させている。

公式出典あり この事例の効果数値は、企業のプレスリリースまたは公式発表に基づいています。 出典を確認

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公開日: 2022年3月22日

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