Before
パナソニックコネクトは、国内に約1万2,400人の従業員を抱える大規模製造業企業である。社員一人ひとりが日々直面する業務上の疑問や情報検索、資料作成、戦略策定のための基礎データ収集などには膨大な時間が費やされており、生産性向上の大きなボトルネックとなっていた。
特に社内規定や品質管理に関する問い合わせ、技術文書の検索、営業資料の作成など、定型化された情報収集業務が多く、社員の創造的業務への時間配分を圧迫していた。また、社外秘情報に対する正確な回答を求められる場面では、一般向け生成AIサービスを使うことができず、社内ナレッジの活用にも限界があった。
AI導入内容
パナソニックコネクトは米OpenAIの大規模言語モデルをベースに、自社向けAIアシスタントサービス「ConnectAI」を開発した。2023年6月から2024年5月までの活用期間で、国内の全社員約1万2,400人に展開している。
ConnectAIの活用シーン
活用ケースは多岐にわたる。
- 検索エンジンに代わる単純な質問のやり取り:社内規定や手続きに関する比較的削減時間が短い問い合わせ
- 戦略策定のための基礎データづくり:長い削減時間につながる高度な情報収集・整理業務
実際に利用した社員らに1回当たりの削減時間を聞くと、平均で約20分との回答だった。
自社特化AIの展開
2024年4月には、同社固有の社外秘情報に対して回答する「自社特化AI」の運用を開始した。対象データは品質管理に関する630件、1万1,743ページの情報である。社員は品質管理規定や製品設計時の品質についての質問が可能となり、専門的な問い合わせにもAIが即座に回答する環境が整った。
今後の展開
同社は今後、データ整備を進め、「パナソニックコネクトコーパス」を構築する考えである。自社データの対象範囲を品質管理に加え、人事の研修サポート、ITサポート、カスタマーセンターなどの社内サービスにも拡大していく。将来的には個人の職種に応じて回答する個人特化AIの導入も検討している。
After
ConnectAIの導入により、パナソニックコネクトは国内の全社員約1万2,400人の労働時間を1年間で18万6千時間削減した。
1回当たり平均約20分の削減効果が、約1万2,400人の日々の業務に積み重なることで、年間を通じて莫大な生産性向上が実現された。単なる時間削減にとどまらず、社員が創造的業務や高度な判断業務に注力できる環境の整備という、質的な働き方の転換にも寄与している。
自社特化AIの展開により、社外秘情報を含む社内ナレッジの民主化も進み、若手社員でも熟練社員と同等の情報にアクセスできる環境が整いつつある。これは技術伝承や標準化の推進にも大きく貢献する。
パナソニックコネクトは、「コーパス構築→自社特化AIの拡大→個人特化AI」というロードマップを描き、生成AIによる組織変革を次の段階へと推進している。
公開日: 2024年6月25日
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