Before
富士通のグローバルビジネスアプリケーション事業本部は、SalesforceのリセールパートナーとしてSalesforceサービスに関する質問やトラブルなどの問い合わせ対応を行うサポートデスク(コンタクトセンター)を設置・運営している。同デスクではSLA(一次回答までの時間)遵守率、自己解決率(一次窓口での解決率)、CSAT(お客様満足度)といった多様なKPIを定め、日々その達成に向けて力を尽くしていた。
しかし、オペレーターやスーパーバイザーの採用と迅速な育成、サービス品質向上、呼量の削減、オペレーター1人あたりの生産性向上といった課題は、コンタクトセンター業界全体の共通の悩みであった。富士通はさらなる進化のために生成AI、特にSalesforceのカスタマーサービス向け生成AI「Einstein for Service」に着眼した。
AI導入内容
富士通は、日本に先立って2023年8月にリリースされていた「Einstein for Service」を北米で実証実験のために導入し、日本での運用を想定した機能検証を行った。検証した機能は以下の2つである。
サービス返信(Service Replies)
顧客からのチャットでの問い合わせに関する返信内容の推奨案を、データやナレッジベースに基づきAIが自動生成する機能。オペレーターはAIが提案した回答を確認し、そのまま送信するか修正して送信する。
会話サマリー(Conversation Summaries)
オペレーターと顧客の会話内容の要約をAIが生成する機能。「いつ、誰が、何に困って、どう解決させたのか」が簡潔に第三者でも分かりやすく要約される。オペレーターは重要なポイントが漏れていないかチェックして保存ボタンを押すだけで作業が完了する。
ナレッジ準備の重要性
生成AIの精度向上には、社内に蓄積した情報を学習させる「グラウンディング」が欠かせない。富士通は過去の質問や回答をナレッジとして残し、Einsteinが学習しやすい形でナレッジを整備した。すでにナレッジを運用している場合でも、グラウンディングのために修正・加筆を行い、Service Repliesの利用に向けた事前準備を徹底した。
AI活用に合わせた運用工夫
- 一問一答の徹底:サービス返信は複数の質問が混ざるとうまく推奨回答が出力されないことがあるため、顧客とのチャットを一問一答になるように展開する工夫がポイントとなった。
- フィードバックによるAI育成:推奨回答の近くに配置された[投稿]や[👎(役に立たない)]ボタンを押すことで、Einsteinの回答精度が向上していく。
- 要約の再確認:会話サマリーは会話が長く続く場合や途中から別の話題に代わる場合に、重要な会話ポイントが要約から漏れる可能性があるため、必ず全体を見直す運用を徹底した。
After
検証は年間受付件数が約1,700件の日本国内のSalesforceサポートデスクに蓄積されたデータやプロセスを翻訳し、Fujitsu North America, Inc.の環境で行われた。
サービス返信による成果 オペレーターの平均処理時間(AHT:Average Handling Time)は、20分36秒から事前の想定期待値12分を大幅に上回る 2分18秒 を記録。実に**89%**の削減効果であった。
会話サマリーによる成果 対応の要旨を記録するなどの平均後処理時間(ACW:After Call Work)が、3分36秒から事前の想定期待値2分を上回って終わる 30秒 に短縮。 86% の削減効果を得た。
2023年12月にEinstein for Serviceが国内で一般提供開始されると、即座に導入を決定し、日本語環境での検証を開始。英語での検証結果に近い導入効果を目指し本格運用に踏み切った。
富士通は自社内での活用を本格化させる一方、得た知見をSalesforceのパートナー企業として顧客企業にも提供し、コンタクトセンターの課題解決を支援していくPoCサービスを用意している。
公開日: 2024年3月27日
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