佐川急便:AI×電力データによる在宅予測で不在配送を約20%削減

JDSCや東京大学と共同で、スマートメーターの電力データをAI解析して在宅を予測する配送システムを開発。横須賀市での世界初フィールド実証で、不在率を約20%改善し、物流効率化に貢献。

+20 %不在配送削減
数値の信頼性
公式出典あり
予測AI

この事例のポイント

導入効果
+20%不在配送削減
導入分野
物流

Before

宅配便業界にとって「不在配送」は長年の構造的な課題であった。佐川急便のドライバーは、日々数百件の荷物を配達する中で、受取人が不在であるために再配達が必要になるケースに頻繁に遭遇していた。再配達はドライバーの走行距離と稼働時間を無駄に増やすだけでなく、顧客満足度の低下や環境負荷の増大にも直結する。

従来の配送ルートは、地理的な最短距離を基準に最適化されていた。しかし、顧客の在宅状況は考慮されていなかったため、「最短距離順に回れば効率的だが、結果的に不在にぶつかり総効率が悪化する」というジレンマが存在した。特に、勤務形態の多様化や共働き世帯の増加により、昼間の在宅率は低下傾向にあり、不在配送のリスクは年々高まっていた。

この問題を解決するためには、プライバシーを侵害することなく、配送当日の顧客の在宅状況をある程度予測する技術が必要だった。しかし、従来の技術ではこの予測精度とプライバシー保護の両立が困難であり、新たなアプローチが求められていた。

AI導入内容

株式会社JDSC、東京大学大学院(越塚登研究室・田中謙司研究室)、横須賀市、グリッドデータバンク・ラボ(GDBL)の5者が共同で、「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に取り組んだ。

スマートメーター電力データ×AI在宅予測

本システムの核心は、全国で普及が進むスマートメーターから得られる電力データをAIで解析し、世帯の在宅状況を予測する技術にある。

在宅判定アルゴリズム

JDSCはAIを用いた電力データ解析技術を特許取得している。世帯の電力消費パターンから、人が在宅しているかどうかを高精度で判定するアルゴリズムを開発した。例えば、冷蔵庫やエアコンの稼働パターン、照明の使用状況などの微細な変化をAIが学習し、在宅の可能性をスコアリングする。

配送ルートへの組み込み

AIが各配送先の在宅確率を算出し、在宅確率の高い順に配達ルートを再構成する。これにより、単純な最短距離ルートではなく、「配達成功率が最も高くなるルート」を生成する。

実証実験の経緯

2018年:東京大学キャンパス内での学術実験

東京大学本郷キャンパス内で、各建物に住宅の電力使用データと在不在情報を模擬的に割り振った上で、電力データのみから最適ルートを提示するシステムの性能評価を実施。2輪車による配送試験の結果、本システムを用いた場合の配送成功率は98%となり、不在配送は91%減少、総移動距離も5%減少した。

2020年:横須賀市での世界初フィールド実証

キャンパス内の学術実験を経て、2020年10月から12月にかけて、横須賀市内で実際の配送会社(佐川急便)、実際の配送手段、実際の市民を対象とした世界初のフィールド実証を実施した。Bルート(スマートメーターのデータを家庭用HEMS機器等で直接受信する方式)を用い、150世帯の協力を得て実際の配達を行った。

After

横須賀市でのフィールド実証により、AI在宅予測システムの実用可能性が明らかになった。

不在率を約20%改善

実際の配送を行った結果、電力データを活用した在宅予測により、不在率を約20%改善できた。特筆すべきは、この効果が担当ドライバー、代走ドライバー、新人ドライバーといった様々なドライバー間で差が見られず、誰が配達しても同様の成果が出せたことである。これは、システムがドライバーの個人技に依存しない普遍性を持っていることを示している。

現実的な運用条件下での効果確認

この削減幅は、「終日不在であっても、配送拠点に荷物が到着した日には必ず訪問し、不在票を残す」という佐川急便の既存ルールを変えずに実現したものである。つまり、理想化された実験環境ではなく、実際の物流現場の制約を受けた中での効果である。

今後の課題と展望

一方で、総走行距離と稼働時間は、「最短距離ルート」ではなく「不在宅を回避したルート」を取るため、増加傾向にあった。今後の改善点として、在宅予測の精度向上とルート最適化の両立を目指し、追加の実証実験が計画された。この取り組みは、電力データという身近なインフラをAIで活用し、社会課題を解決する新たなモデルとして注目を集めている。

公式出典あり この事例の効果数値は、企業のプレスリリースまたは公式発表に基づいています。 出典を確認

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公開日: 2020年12月1日

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