Before
佐川急便は、年間約13億個の荷物を取り扱う日本を代表する宅配便企業である。全国の拠点から日々膨大な数の荷物が運ばれる中、各荷物に添付される配送伝票の情報をシステムに入力する業務は、物流オペレーションの根幹をなす重要な後方支援業務だった。
繁忙期には1日に100万枚を超える配送伝票が発生し、その情報を人の手で一つひとつ入力していた。伝票に記載されている手書きの数字—特にサイズや重量に関する情報—は、伝票の種類や筆者によって字の質が大きく異なる。〇で囲まれた数字、取消線で修正された数字、複写式伝票の記入時や運搬過程で生じた擦れや傷など、人間の目で読み取るのすら困難なケースが少なくなかった。
この業務は単純作業ではあるが、膨大な量を処理する必要があるため、多くの人員と時間を消費していた。人の手による入力は、疲労や経験差により入力ミスや読み違いが発生しやすく、品質の安定確保にも限界があった。さらに、労働力の確保が困難になる中で、この伝票入力作業の自動化は喫緊の課題となっていた。
AI導入内容
佐川急便は、SGシステム、フューチャーアーキテクトと共同で、深層学習を活用した文字認識AIに基づく新システムを2018年12月から開発し、2019年7月に本稼働させた。
高精度AI-OCRの核心技術
本システムの最大の特徴は、従来のOCRでは対応が困難だった「手書き数字」の認識精度にある。
手書き数字の認識精度99.995%以上
深層学習モデルは、配送伝票に記載された手書きのサイズ・重量などの数字を、99.995%以上の精度で読み取ることを達成した。〇で囲まれた数字や取消線で修正された数字も正しく認識し、複写式伝票の擦れや傷が生じた状態でも問題なく読み取れる。これにより、人の目では見落としがちな微妙な差異も、AIが安定して検出する。
読み取りからデータ連携までの完全自動化
AIが伝票画像を解析して情報を読み取った後、そのデータを自動的に既存の業務システムへ連携する。これまで人が行っていた「目視確認→キー入力→システム登録」という一連の作業が、撮影→AI解析→自動連携のワークフローに置き換わった。配達状況の追跡や運賃計算など、下流の業務プロセスにもリアルタイムでデータが反映される。
現場へのスムーズな統合
新システムは、佐川急便の配送伝票情報入力を受託しているSGシステムなどの現場に導入された。繁忙期のピーク業務にも耐えうる処理速度と安定性を持ち、年間を通じて変動する伝票枚数にも柔軟に対応できる設計となっている。
After
AI-OCRシステムの本稼働により、佐川急便の配送伝票入力作業は劇的に変貌した。
月間約8,400時間の作業時間削減
人の手による膨大な入力業務がAIで代替・自動化された結果、月間で約8,400時間もの作業時間を創出できた。これにより、貴重な人的リソースを品質管理や顧客対応など、付加価値の高い業務に再配分できるようになった。単なるコスト削減にとどまらず、組織全体の生産性向上に直結している。
高品質なデータ入力の安定確保
99.995%を超える認識精度により、入力ミスや読み違いが大幅に減少した。特に、繁忙期に人員を急増させた際に品質が低下するというリスクが排除され、一年中を通じて安定した高品質のデータ入力が実現している。これは、荷物追跡の正確性や顧客への情報提供の信頼性向上にも寄与している。
グループ全体への技術展開
今回の開発で培った深層学習OCR技術は、SGホールディングスグループ各社への順次展開が進められている。単一の業務改善を超えて、グループ全体の多様な業務における「人とAIの協働」モデルを構築する基盤となっている。
この取り組みは、単純作業の自動化こそが、物流業界の人的資源を最大限に活かす第一歩であることを示している。
公開日: 2019年7月1日
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