東広島市役所:ServiceNowでCRMを構築、市職員の内製開発で市民サービスを革新

東広島市がServiceNow Now Platformで市民・事業者向けポータルを構築。職員自身による内製開発で子育て支援サービスをリリース。登録者数は1万6000人から3万3000人へ倍増。

+33000 人のポータル登録者数
数値の信頼性
公式出典あり
RAG

この事例のポイント

導入効果
+33000人のポータル登録者数
業種
士業

Before

広島県東広島市は、広島大学や関連企業が集積する「学術研究都市」として発展してきた中核市である。市民サービスの向上を目指し、2019年頃までに様々なスマートフォンアプリを導入してきたが、これらが乱立しタッチポイントが分散するという逆説的な課題に直面していた。

「住民サービス向上のために導入したさまざまなスマホアプリが乱立し、タッチポイントが分散していました。しかもこれらのサービスのほとんどは、双方向コミュニケーションには対応できていませんでした」と、東広島市総務部DX推進監の担当者は振り返る。

住民のライフスタイルが多様化していく中で、個別に導入したサービスは使い勝手の悪さが壁となり、利用者が伸び悩んでいた。申請書類の提出は窓口か郵送が基本で、オンライン化は進んでいなかった。さらに、各サービスが独立したシステムで運用されていたため、市民の行動データや属性データが連携されず、個別最適化されたサービス提供は実現できていなかった。

2020年、コロナ禍の発生を受け、対面による行政サービスの制約が生じた。同時に、国は特別定額給付金の支給など迅速な行政対応を自治体に求めた。しかし、既存のシステムでは柔軟な対応が困難であり、コロナ禍によるスケジュール遅延と短期間での開発という困難な状況が重なった。

「そもそも過去に手がけたことのない分野のシステム開発であることから、実現可能性に対するリスクもありました」と担当者は当時の苦しい状況を語る。デジタル人材の不足と予算の制約の中で、どのようにして市民サービスのデジタル化を進めるかが喫緊の課題となっていた。

AI導入内容

東広島市はこれらの課題を解決するため、ServiceNowのNow Platformを基盤に、市民と市役所、学校をつなぐ新たなプラットフォームの構築を決定した。特徴的なのは、システム開発を外部ベンダーに完全に委託するのではなく、市職員自身が内製開発を行うアプローチを採用した点である。

CRM(Citizen Relationship Management)の構築

東広島市は「市民に寄り添うサービス」の提供を目指し、AIエージェント機能を備えたデジタル接点を構築した。

AI Searchによる統一タッチポイント ServiceNowのAI Search機能を搭載した市民ポータルを構築。住民が自然言語で入力した疑問(例:「大学周辺のゴミ出しルールは?」)をAIが解析し、分散していた行政情報や学校関連データから関連性の高い情報を即座に提示する。居住地や趣味などに関する情報をオプトインすることで、AIがユーザー属性に合わせて「ほしい情報」をレコメンドするパーソナライズ機能を実装した。

Virtual Agentによる双方向コミュニケーション ポータルには、自然言語理解(NLU)を搭載した Virtual Agent(AIチャットボット) を配置。申請手続きのガイダンスや、イベントの検索などをAIエージェントが対話形式でサポートする体制を整えた。

職員による内製開発

東広島市のServiceNow導入の最大の特徴は、市職員が自らNow PlatformのAI機能やワークフローを直接設計する内製化への取り組みである。

AIモデルの自律的な管理 職員がAI Searchの辞書(シノニム)設定や、Virtual Agentの対話シナリオ(トピック)を自力で作成。現場のニーズに即したAIの応答精度改善を、外部ベンダーを介さず迅速に行えるようになった。

カタログアイテムの作成 ユーザー情報の登録フローなど、各種申請フローを職員が自らカタログアイテムとして作成。業務主管部門の知見を直接システムに反映できるようになった。

データテーブルの設計とAPI連携 利用者情報が格納されるデータテーブルの準備、外部サービスとのAPI連携、ポータル上へのインラインフレーム表示なども、市職員の手によって実装。Now Platformの強力なローコード機能を活用することで、システム開発の専門知識が浅い職員でも高度なCRM構築が可能になった。

子育てポータルの開発事例

内製化アプローチのもとで進められた代表的なプロジェクトが、子育て世帯(就学前児童)の負担軽減を目的としたサービス開発である。

ワーキンググループによる継続的開発

業務主管部門とデジタル部門の職員によるワーキンググループを立ち上げ、2022年4月から約1年間にわたり週1回のペースで継続的なワークを実施。対象となる住民の声を直接取り入れながら利用者のニーズを明確化し、デジタルを活用したサービス提供について検討した。

3つの新サービスのリリース

2023年2月にリリースした子育てポータルでは、以下の3つのサービスが追加された。

  1. イベント・お出かけ情報のお知らせサービス:カレンダー形式のUIから、市内で開催される妊産婦・乳幼児を対象としたイベントやお出かけ情報を簡単に検索できる。

  2. ライフイベントに伴う手続きガイド:簡単な質問に答えることで、出生などの際の手続き場所や必要書類などのガイダンスをプロアクティブに提供。

  3. 母子健康手帳交付および赤ちゃん訪問の予約・申請手続きのデジタル化:問診などの申請もスマートフォンから行うことができる。

技術的特徴

ノーコード・ローコード開発プラットフォーム

ServiceNowのNow Platformは、システム開発の経験が浅い人でも使えるノーコード・ローコード開発プラットフォームとして機能。プログラミングの専門知識がなくても、業務知識を持つ職員が自らシステムを構築できる環境を提供した。

強力な開発環境とデータガバナンス

「Now Platformの強力な開発環境(ノーコード・ローコード)、データガバナンス、ワークフローといった機能を利用することで、事業者はもちろんのこと、市職員が自主的にサービスを開発し、アドインしていくことが可能です」と担当者は評価する。

短期間での構建

2020年12月に構築事業者を決定し、翌2021年3月に運用を開始というタイトなスケジュールで作業を完了。コロナ禍の困難な状況の中、短期間でのCRM構建を実現した。

After

ServiceNow Now Platformを基盤としたCRM構築と内製開発の推進により、東広島市は以下の定量的・定性的な成果を達成した。

ポータル登録者数の大幅増加

サービスをリリースした2021年4月当初は約1万6000人の登録者だったが、2023年3月時点では3万3000人を超えるまでに成長。市民からの支持と信頼を獲得し、デジタル行政サービスの定着を実現した。

内製開発によるスピーディーなサービス改善

市職員が自らシステムを開発できるようになったことで、現場のニーズに即した迅速な改善が可能になった。外部ベンダーへの発注や調整を待つ必要がなく、業務主管部門の知見を直接システムに反映できるサイクルが確立された。

市民サービスの利便性向上

子育てポータルのリリースにより、妊産婦・乳幼児を対象としたイベント情報の検索、手続きガイドの提供、母子健康手帳交付のオンライン予約などが可能になった。子育て世代の負担軽減と行政サービスのアクセシビリティ向上を実現した。

デジタル人材の育成

内製開発の取り組みを通じて、市職員のデジタルスキルが向上。ServiceNowの操作スキルやワークフロー設計能力、UI/UXの知見などが組織内に蓄積され、持続可能なデジタル行政の基盤が構築された。

住民と事業者の有機的な連携

市民ポータルと事業者ポータル『サポートビラ』の両輪により、住民と事業者が有機的につながる環境が整った。地域経済の活性化と市民サービスの充実が相乗効果を生む土台ができた。

他自治体へのモデルケース

東広島市の取り組みは、中核市におけるServiceNow活用と内製開発の先進事例として注目されている。デジタル人材の不足する地方自治体においても、ノーコード・ローコードプラットフォームを活用することで、市民サービスのデジタル化を進められることを示した。

「市民に寄り添うサービス」の提供を目指し、東広島市のデジタル化は進化を続けている。大学プラットフォームとの連携など、将来的な構想も含め、ServiceNowを基盤とした市民・事業者ポータルは、地域の発展に寄与する重要なインフラとなっている。

公式出典あり この事例の効果数値は、企業のプレスリリースまたは公式発表に基づいています。 出典を確認

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公開日: 2024年3月1日

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