Before
JTBコミュニケーションデザイン(JCD)は、ツーリズム領域を中心とした総合プロモーション企業として、クリエイティブの制作から戦略プランニング、デジタル広告運用までを手がけてきた。しかし、観光事業者や自治体のクライアントからは共通の課題が寄せられていた。それは、デジタルマーケティングの強化は不可欠とわかっていても、専任のデジタルマーケターが在籍していない、あるいは複数の業務を抱えながらサイト運営を兼任しているケースが多いという点だった。
Googleアナリティクスは無料で利用できるが、操作に高度な知識と慣れが必要であり、特に最新版のGA4(Googleアナリティクス4)への移行後は、より専門的なスキルが求められるようになった。観光事業者にとって自社サイトは消費者との重要なタッチポイントであり、効果的なプロモーションによる流入とともに、サイト自体がコンバージョン(予約や申し込み)に結びつくものでなければならない。しかし、サイトに集まるデータを分析・検証してPDCAを回し、新たな打ち手を実行していくことができている現場は限られていた。
特に、コンバージョンポイントの設計が難しいDMO(観光地域づくり法人)や自治体では、集客したいのか誘客に向けた仕掛け作りをしたいのか、その目的によってアプローチが変わってくるが、適切な指標設定ができていないケースが多かった。
AI導入内容
JCDは、ツーリズム産業に携わる誰もが使いやすい業界特化型のサイト解析ツール「AIアナリストforツーリズム(AIT)」を開発した。Googleアナリティクス(GA4)と連携し、3.8万サイト以上の運用データを学習した機械学習モデルがデータを分析・可視化することで、専門知識がなくても直感的にサイトの状況を理解できるようにした。
機械学習モデルによるデータ分析と可視化
AITは、パートナーであるWACUL社が持つ膨大なウェブサイト情報をビッグデータとして学習した「AIアナリスト」のエンジンを活用。GA4から取得したサイトへの訪問者数、コンバージョンレート(CVR)、流入元などの生データを、独自のアルゴリズムで解析し、改善のインパクトが大きいポイントを特定する。
週次や月次ごとに自動生成される「サイトレポート」では、AIが傾向と対策を要約。単なる数値の羅列ではなく、「どのページを修正すべきか」といった具体的なアクションをAIがレコメンドするため、専門知識がなくてもデータに基づいた意思決定が可能になった。
SEO対策支援機能
観光地名など狙ったキーワードで検索上位に掲載されるための対策が、現状で十分に取られているかをスコアリングで評価する「SEO提案」、Google検索においてクリック数が多いキーワードの主要指標やコンバージョンなどを確認できる「SEOレポート」などを搭載。観光産業特有の「発地の観点」からアクセス元を把握できる機能もあり、商圏の分析が可能になった。
ユーザーファネル分析とサイト提案
「ユーザーファネル分析」では、サイト訪問者の流入元やコンテンツの認知から、関心・興味の度合いを可視化し、最終的に目標とするコンバージョンへの到達数や率を追うことができる。また、GA4対応版より追加された「サイト提案」機能では、ウェブサイトを類型化し、各サイトの目的に沿って必要な要素が作られているかをスコア診断。コンバージョン向上に向けたUI/UXの改善ポイントを即座に見つけることができる。
After
AITの導入により、観光事業者や自治体は以下の成果を達成した。
ガーラ湯沢(スキーリゾート)のケース
自社サイトの運用・分析ができる人材が社内にいない中で、リフト券の事前販売促進に取り組む必要があった。AITでのアクセス解析により、サイト内でのリフト券事前購入ページまでの導線に課題があったことが判明。顧客の目につきやすい適切な場所に適切なリンクボタンを配置したところ、遷移率が向上し、リフト券の事前購入者が増加した。
あまがさき観光局のケース
サイトの活用方法が不明確という課題を抱えていた。AITの分析レポートでSNSからの流入情報の分析、SEO対策のアドバイスなどを行いながらサイト運用サポートを開始。レビューミーティングを定期的に重ねることで、観光局内でサイトの質向上に向けた議論が進み、PDCAのサイクルを回せるようになった。
このように、AITはツーリズム領域でのDXの取っ掛かりとして機能し、Googleアナリティクスと紐付けることで成果が見える化される。専門コンサルタントによる伴走型サポートも提供することで、自走に向けた支援を行い、観光産業全体のデジタル化を推進している。
公開日: 2023年9月29日
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