Before
幸楽苑は福島県を中心に約140店舗を展開するラーメンチェーンである。創業以来、地域密着型の経営で親しまれてきたが、2020年の新型コロナウイルス流行以降、大きな課題に直面していた。
非接触型サービスの必要性 コロナ禍において、来店客の感染不安が高まり、飲食店には非接触型のサービス提供が求められるようになった。特に家族連れの客層では、小さな子どもを連れた親にとって「安心して食事できる環境」が最重要課題となっていた。
人手不足とスタッフ負担 飲食業界全体の人手不足は幸楽苑にも影響を与え、スタッフ一人ひとりの負担が増大していた。配膳・下膳業務は肉体的にも負担が大きく、特に繁忙時はスタッフが厨房と客席を往復するだけで精一杯となり、本来の接客業務まで手が回らない状況が発生していた。
差別化の必要性 ラーメン業界は競争が激しく、価格競争だけではなく、体験価値での差別化が求められていた。単なる「ラーメンを食べる場」ではなく、「行ってみたい」「また来たい」と思える体験を提供する必要があった。
AI導入内容
幸楽苑は2020年8月、ラーメン業界としては初めてとなる AI配膳ロボット「K-1号(ケー・イチゴウ)」 の導入実証実験を、福島県本宮市の本宮店で開始した。JSP ROBOTの自律走行AI技術を活用した非接触型自動配膳ロボットである。
K-1号の機能と特徴
AI搭載の自律走行システムにより、人や物にぶつからず安全に配膳業務を行う。
自律走行AI技術 センサーとAIの組み合わせにより、店内のレイアウトを自動で認識し、最適なルートで配膳を行う。人や障害物を検知して自動的に回避し、混雑時でも安全に走行できる。
非接触型配膳 スタッフが直接客席に行くことなく、ロボットが料理を運ぶことで、スタッフと客の接触機会を最小化。コロナ禍における衛生管理の徹底に貢献した。
エンターテイメント性 音声案内機能を搭載し、「ロボット従業員」としてのキャラクター性を持たせた。子どもたちに人気のコンテンツとなり、 「ロボットが運んでくるラーメン」 という体験自体が来店動機になるよう設計された。
利用フロー
お客様がテーブルに設置されたタブレットで料理を注文→店舗スタッフが注文内容を確認→出来上がった料理をロボットのトレーに乗せ、タッチパネルで移動を指示→ロボットがお客様の席まで料理を運ぶ→お客様が料理を受け取った後、ロボットの音声案内に従い頭のセンサー部分に手をかざすと、ロボットは厨房に戻る。
この一連の流れにより、スタッフは配膳業務から解放され、本来の接客や調理に集中できるようになった。
After
AI配膳ロボット「K-1号」の導入により、幸楽苑はコロナ禍における課題解決と新たな集客力の獲得に成功した。
非接触型サービスの実現による安心感の提供 家族連れを中心に、非接触型の配膳を好評いただき、感染対策への信頼感が向上。コロナ禍における飲食店選びの重要ポイントであった「安心・安全」を訴求できた。
スタッフ負担の軽減と接客品質の向上 配膳業務が自動化されたことで、スタッフの移動距離が最大で約50%削減され、スタッフは接客や調理に集中できる環境が整った。結果として、テーブルでのお客様とのコミュニケーション時間が増え、サービスの質が向上した。
集客ツールとしての効果 「ロボットが運んでくるラーメン」という珍しい体験が口コミを呼び、SNSでの拡散効果も期待できた。屋外大型ビジジョンに「配膳ロボット好評稼働中!!」と掲載し、集客ツールとして積極的に活用している店舗も現れた。
スタッフの働きやすさ向上 重い料理を運ぶ業務から解放されることで、スタッフの身体的負担が軽減。特に女性スタッフや高齢のスタッフにとって、働きやすい環境の整備につながった。
実証実験の拡大 本宮店での実証実験を経て、幸楽苑はさらに複数店舗(栄町店、東寺山店など)への展開を進め、最終的に6号店、7号店目と拡大。のぼりや大型ビジョンで「配膳ロボット可動中」とアピールし、店舗の差別化要素として確立していった。
幸楽苑の取り組みは、コロナ禍という困難な状況を最新テクノロジーで乗り越え、さらには新たな集客力として転換させた好例である。非接触型サービスは感染対策としての側面だけでなく、エンターテイメント性を持たせることで「体験価値」として磨き上げられ、ラーメン業界の新たな可能性を示している。
公開日: 2020年8月20日
事例一覧に戻る