Before
鳥貴族は全国に621店舗を展開する焼鳥チェーンである。全品360円均一というリーズナブルな価格設定と国産食材へのこだわりで、幅広い層から支持を得ている。しかし、直営店においては予約電話への対応が大きな課題となっていた。
居酒屋業態の特性上、ピークタイム(17時〜21時)には電話が鳴り止まず、接客中や提供中のスタッフが電話対応に追われる状況が常態化していた。結果として、電話不応答による予約取りこぼしが頻発し、機会損失が深刻化していた。特に直前予約が多い都市部店舗では、電話に出られないことで顧客が他店に流れるケースが少なくなかった。
また、予約対応にはルールの習得が必要で、若いアルバイトスタッフにとっては心理的ハードルが高く、研修コストも無視できない負担となっていた。深刻な人手不足の中、電話応対に時間を取られて本来の接客業務に集中できないという悪循環が続いていた。
AI導入内容
鳥貴族は2023年4月、飲食店向け予約管理システム「ebica」を提供する株式会社エビソルが開発した**AI電話予約応対サービス「AIレセプション」**を、直営60店舗に導入した。対話型AIソリューション「LINE AiCall」を活用し、ワークスモバイルジャパンの「LINE CLOVA」と協働して開発されたものである。
AIスタッフ「さゆり」の機能
AIレセプションの中核となるのは、AIスタッフ 「さゆり」 である。従来のプッシュボタン式自動受付とは異なり、抑揚のある自然な音声で、まるで人と会話しているかのような応対を実現する。
24時間365日対応 営業時間外や繁忙時でも電話に応答でき、予約取りこぼしを防止。スタッフが休憩中や接客中でも、AIが一次対応を完結させる。
ebica連携によるリアルタイム予約 予約管理システム「ebica」の空席データと連携し、来店当日の直前予約や予約内容の確認に対応。希望時間帯が満席の場合は、前後の予約可能時間や近隣系列店を自動提案する。
フリートーク対応 「明日の19時に3名で予約したい」「アレルギーがあるんですが」といった自然な会話を理解し、適切に応対。来店人数や時間帯の調整もスムーズに行える。
導入プロセス
鳥貴族はまず都内21店舗で先行導入し、約2か月の実証実験を実施。店舗スタッフからのフィードバックを収集し、サービス内容をブラッシュアップした上で、直営60店舗に拡大展開した。導入対象店舗は予約割合の高い店舗を中心に選定され、月間推定3万件以上の電話応対をAIが代替することになった。
After
AIレセプションの導入により、鳥貴族は予約獲得の効率化とスタッフ業務の質的向上を同時に実現した。
予約数の大幅増加 先行導入した都内21店舗での実証結果は圧倒的だった。ネット予約が導入前比4.5倍、電話予約も1.5倍に増加した。AIによる24時間対応とスムーズな予約体験が、顧客の予約ハードルを下げた結果である。
予約取りこぼしの削減 ピークタイムの電話不応答率が大幅に低下し、機会損失が抑制された。特に直前予約の獲得が増加し、席の埋め率向上に貢献している。
スタッフ業務の質的向上 月間1万件超の電話応対がAIに代替されたことで、スタッフは目の前のお客様の接客に集中できる環境が整った。電話対応に追われることなく、注文の確認や料理の説明、おもてなしに時間を割けるようになり、店内体験価値の向上に直結している。
採用・研修コストの削減 電話対応という心理的ハードルの高い業務がAI化されたことで、アルバイトスタッフの負担が軽減。採用時の研修コストも削減され、人手不足の中で人材確保がしやすくなった副次効果も生まれている。
SNSでは「鳥貴族に予約の電話したらAIさゆりが出た。会話できるタイプで、予約めちゃくちゃスムーズだしこりゃすごいわ」といった顧客からのポジティブな声も寄せられ、AI導入がブランドイメージの向上にも寄与している。
鳥貴族の取り組みは、飲食業界における人手不足と予約業務の効率化という二大課題を、AI技術で解決した先進的な事例として、業界から高い注目を集めている。
公開日: 2023年5月16日
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